3人のタイトル候補が最前列に並ぶ決戦へ 戦略と重圧が焦点のアブダビ最終戦
2025年シーズンのF1タイトル争いは、映画のような配置で最終局面を迎えた。ポールポジションにマックス・フェルスタッペン、その横にランド・ノリス、2列目3番手にはオスカー・ピアストリ。わずか16ポイント差で並ぶ3人のタイトル候補が、ヤス・マリーナで直接対決に臨む。
フェルスタッペンは今季屈指の強烈なアタックでポールポジションを獲得したが、タイトルの行方は依然としてノリスに傾いている。ノリスは決勝で3位以内に入れば、自身初の世界王者が確定する。一方でピアストリは、首位2人が大きく崩れる展開でなければ逆転は難しい状況だ。
レースを左右する戦略的駆け引き

注目されるのは、フェルスタッペンとレッドブルがどのような戦略を用いるかだ。単独勝利だけでは不十分で、ノリスが4位以下に沈まなければタイトルは届かないため、状況次第ではペース調整などの駆け引きが発生する可能性もある。
ノリスは「何が起きてもおかしくない」と警戒する。
一方フェルスタッペンは、2016年にルイス・ハミルトンが見せた“バックアップ走行”の再現可能性には慎重な姿勢を示し、「今のレイアウトでは簡単ではない」と語った。ただし「アブダビの魔法が必要だ」とも述べ、展開次第ではタイトルが転がり込む可能性を示唆した。
マクラーレン内部の状況
ピアストリは3番手からのスタートとなるが、チームがノリス支援の指示を出すかどうかが焦点となる。先週のカタールで戦略が裏目に出て勝機を逃したこともあり、アンドレア・ステラ代表は「これまでの失敗は道のりの一部」と語り、確実な遂行を最優先に掲げている。

ピアストリはターン1でのリスクについて問われると、「面白いことが起きても不思議ではない」と冷静に答えた。
重圧と心理戦
初タイトルがかかるノリスにとって、精神的な重圧は未知の領域となる。テレビ解説陣からも「世界王者になれるかどうかの前夜に眠れる選手はいない」と指摘が入り、緊張感は高まっている。
フェルスタッペンも珍しく「少しナーバスになった」と打ち明けたが、それを力に変えてポールポジションを引き寄せたと話した。
劇的な決戦の条件は整った。ポールスタートながら“他力”が必要な王者、冷静さを装う首位リーダー、そして混乱を狙う3番手の挑戦者。フェルスタッペンは「うまくいくこともあれば、全てが裏目に出ることもある。答えは明日だ」と語った。
角田裕毅、静かだが重要な役割

その裏で、角田裕毅が予選の行方を左右する重要な働きを見せた。Q3の1回目のアタックで、フェルスタッペンに理想的なスリップストリームを提供。これがポールポジション獲得の一因となった。
フェルスタッペンは「助けになった。チームプレーとして素晴らしかった」と角田を称賛。ローラン・メキース代表やヘルムート・マルコ氏も高く評価している。
2026年からリザーブドライバーに回る角田にとって、これはレッドブルでの最後の予選の可能性が高く、タイトル争いに影響を与える貴重な貢献となった。
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