ベアマンの躍進、フェラーリは“ハミルトン後”も視野に
2025年シーズン終盤にかけて、オリバー・ベアマンは一気に存在感を高めた。シンガポールGPでは予選9番手から決勝9位。続くアメリカGPでも8番手スタートから再び9位でフィニッシュした。さらに、メキシコGPでは予選10番手から自己最高となる4位入賞を果たし、ブラジルGPでは8番手スタートから6位。ラスベガスGPでも10位に入り、安定した結果を残し続けている。
こうした活躍を背景に、フェラーリの将来構想の中でベアマンの名前が改めて注目を集めている。ルイス・ハミルトンはフェラーリとの契約を全うし、今後もF1で走り続ける意向を示しているが、チームは万が一に備えた“プランB”をすでに用意している。その有力候補が、ベアマンだ。
仮にハミルトンが契約途中でF1から身を引くような事態になれば、フェラーリがシャルル・ルクレールのチームメイトとしてベアマンを昇格させる可能性は十分にある。本人も、その立場を強く意識している。

シーズン終了後のメディア対応で、ベアマンは次のように語った。
「僕は今、F1を走っている。だからこそ自分を信じなければならない。そういう意味では、昇格する準備はできていると思っている。ただし、証明し続ける必要がある。5、6レースうまくいったからといって、すべてが一気に変わるわけではない」
さらに、現実的な自己評価も忘れていない。
「シーズン中盤には4戦連続で11位だったこともあった。安定はしていたけれど、十分とは言えなかった」
その上で、後半戦の変化を強調する。
「確実に成長できたと思う。特に夏休み明けからはいいリズムと勢いをつかめた。だから、今は準備ができていると言える」
ハミルトンのフェラーリ加入は、2024年シーズン開幕時に大きな話題を呼んだ。F1史上最多勝のドライバーが、最も成功したチームに加わるという“歴史的移籍”だったが、初年度の成績は厳しいものとなった。グランプリでの表彰台はなく、ドライバーズランキングは6位。中国GPでのスプリント勝利も、大きな慰めにはならなかった。
ここで改めて浮かび上がるのが、“イギリス人ドライバーとフェラーリ”の関係だ。これまでフェラーリのワークスドライバーとして起用されたイギリス人は10人いるが、ワールドチャンピオンに輝いたのは1958年のマイク・ホーソーンと、1964年のジョン・サーティースの2人だけである。
また、ハミルトン以前、最後にフェラーリで走ったイギリス人はエディ・アーバインだ。1999年のミハエル・シューマッハがシルバーストンで大怪我を負ったシーズン、アーバインはミカ・ハッキネンと激しいタイトル争いを繰り広げ、あと一歩で王座に手が届くところまで迫っている。
フェラーリで最も多くのレースを戦ったイギリス人は、アーバイン(65戦)。最多勝はサーティースとアーバインの4勝、最多ポールポジションはホーソーンとサーティースの4回となっている。
一方で、サーティースやナイジェル・マンセルのように、過度な政治的要素や重圧に疲弊し、マラネロを去ったドライバーも少なくない。そうした歴史の中で、ベアマンは次なる“イギリス人フェラーリドライバー”となるのか。その行方は、ハミルトンの将来とともに注目されている。
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