ベルガー、33年ぶりにホンダV12エンジンと再会

ゲルハルト・ベルガー、渡辺康治氏、田辺豊治氏
スポンサーリンク

1992年ポルトガルGPで表彰台を獲得してから33年――ゲルハルト・ベルガーは、自身のF1キャリアを象徴する特別な一品と再会を果たした。それは、当時のマクラーレンMP4/7Aに搭載されていたホンダRA122E/B V12エンジンだった。

グランプリで通算10勝を挙げた元オーストリア人ドライバーのベルガーは、この貴重なエンジンを本田技研工業のモータースポーツ部門を率いるホンダ・レーシング(HRC)社長の渡辺康治氏、そして当時の担当エンジニアである田辺豊治氏から直接受け取った。シリアルナンバー「FDRE-V039」が刻まれたこのブロックは、栃木・さくら市のHRCファクトリーで完全にレストアされ、セレモニーの場で正式にベルガーの手に渡された。

このエンジンは単なる展示物ではない。ベルガーがエストリルで予選4番手につけ、決勝でチームメイトのアイルトン・セナを抑えて2位でフィニッシュした時に実際に使われたものである。当時の鮮烈な記憶が、今回のV12の”帰還”によって現実のものとして甦ったのだ。

渡辺氏は「1992年のこのエンジンを、実際に走らせ、表彰台を獲得したベルガーさんにお渡しできて大変嬉しく思う。今回の出来事は、ホンダのF1の歴史をより広く共有していきたいという私たちの思いを象徴している」と語った。

スポンサーリンク

一方、田辺氏も感慨深げに「私は当時、ベルガーさんの担当エンジニアだった。その同じエンジンを今日こうして本人に直接渡せることは非常に特別であり、この歴史的な文脈で再び目にすることは大きな名誉だ」と述べた。

ベルガーもまた、ホンダと共に過ごした年月への深い感謝を口にした。

「私のF1キャリアの中で最も素晴らしい時間のひとつは、ホンダと共に戦った時代だった。彼らの情熱、勝利への執念、そして人としての温かさに強く心を打たれた。特に田辺さんとの間に築いた友情は、私にとって最も美しい思い出のひとつだ」

1980年代後半から1990年代初頭にかけてのマクラーレン・ホンダのパートナーシップは、モータースポーツ史において伝説として語り継がれている。数々のワールドタイトルや象徴的な勝利を生み出し、卓越した技術力の象徴となった。その中でもRA122E/B V12は、ホンダの名声を支えた「力強さ」「信頼性」「洗練された技術」の象徴であった。

スポンサーリンク

今、ベルガーの手元には単なる記憶ではなく、F1がV12サウンドを響かせていた時代を物語る「生きた証」が存在している。

【関連記事】

スポンサーリンク

類似投稿