レッドブルが評価する“開発力と安定性”─角田裕毅がアメリカGPで示した進化

テキサス州オースティン発――灼熱のテキサスの太陽と厳しい視線の下、角田裕毅は2025年シーズンで最も成熟したパフォーマンスを披露した。サーキット・オブ・ジ・アメリカズで開催されたアメリカGPの週末は、予選でのトラブルからチーム内のライバル争いまで、彼の精神力のあらゆる側面を試すものとなった。しかし、彼はポイントを獲得し、冷静さを保ち、レッドブル首脳陣からの信頼を得て週末を終えた。
ヘルムート・マルコが「間違いなく彼のベストレースだった」と評したように、2026年のラインナップが決まるまで残りわずかなレースを前に、角田のパフォーマンスはレッドブルでの将来を左右する重要なものとなる可能性がある。
プレッシャー漬けの週末
角田にとって、オースティンは心理テストのような展開となった。レーシングブルズのリアム・ローソンとのライバル関係は緊張感を増し、予選でも火花を散らした。
スプリント予選では、チームのミスで最終アタックのタイミングを逃し、ローソンを抜こうとした際にブロックを受ける形に。
ルール上は問題なかったが、レッドブル内部の熾烈な争いを象徴する瞬間だった。
結果的にローソンがSQ2へ進出し、角田は早期敗退。しかし翌日のスプリントでは11台抜きで7位入賞と見事に巻き返し、無得点に終わったローソンに対して意地を見せた。
本予選では、角田はローソンに妨害されたと訴えたが、またしてもローソンが前でフィニッシュした。しかし決勝、角田は再び反撃を見せた。グリッドのクリーンサイドからスタートし、ターン1でローソンをかわすと、そのまま後ろを振り返ることはなかった。
だが、彼の積極性を称賛しない者もいた。バトルの後、ハースのオリバー・ベアマンは角田が「少し必死すぎる」と批判した。しかしレッドブル内部では、その激しさは評価されている。特にヘルムート・マルコは、慎重さよりも本能と大胆さを重視する昔ながらのレースクラフトを今でも高く評価している。
この変化は、夏休み明け以降、角田の自信の高まりとRB21の限界に対するマシン理解の深まりにたどり着く。彼はマックス・フェルスタッペンのものとは根本的に異なるマシンから安定性とペースを引き出すことを学び、オーバードライブやマシンを壊さなくなった。
しかしここに問題がある。多くの外部の評論家はそのマシン性能の違いを理解していながらも、
結局は他のチームメイト同士と同じ基準で角田を評価してしまうのだ。
表面下にある技術的な格差
データ上では、角田はフェルスタッペンに1周あたりほぼ0.9秒遅れている。しかしガレージ内部では、チームはその理由を理解している。
角田のRB21は、旧世代のフロントウイングやわずかに異なるフロアを持つ高めの車高設定など、依然として旧スペックのパーツで走っている。一方、フェルスタッペンは最新のフロアとフロントウイングのアップグレードを装備している。それがもたらす差は1周あたり0.6から0.7秒と推定されている。
チーム内では周知の事実だが、すべてのアップデートやリソースは最終的にフェルスタッペンのタイトル獲得のために使われている。角田のマシンは、チームの開発プログラムを実走で試すテスト用プラットフォームとして活用されることが多い。
チーム代表のローラン・メキースは「私たちにはユウキが必要だ。ユウキが速ければ速いほど、2台のマシンでテストを効率よく分散できます」と述べている。
そして、オースティンでのチームのダブル優勝を経て、この方針はさらに強化される見込みだ。
レッドブルは、今年の5度目のタイトル獲得のために、2026年用の開発計画さえ妥協する覚悟でいるように見える。
つまり、角田は単なるポイント獲得者ではなく、フェルスタッペンのタイトル獲得に不可欠な開発ドライバーという役割を担うことになる。その枠組みの中で、角田はチームから与えられた役割をこなさなければならない──これは、F1の経験豊富な関係者でさえ見落としがちな現実だ。
静かに重要性が増した週末
オースティンでの2回連続の7位フィニッシュは、角田裕毅の着実な進歩を裏付けるものとなった。純粋なレースクラフトを通じて、チームメイトとは根本的に異なるマシンから最大限のものを引き出し、ヘルムート・マルコ博士からさえも敬意を獲得した。
ローラン・メキース、ピエール・ワッシュ、そしてレーシングブルズのアラン・パーマネやピーター・バイヤーといった主要人物たちは、角田の冷静さ、技術的洞察力、そして何よりチームへの揺るぎない忠誠心や、目的のために自分の役割を全うする姿勢を高く評価している。
加えて、メキースがレッドブル内で着実に影響力を強めていることから、角田の将来はますます安定しているように見える。
結局のところ、F1史上最も才能あるレーサーの一人に対して、限られたリソースで対等に渡り合える能力を持つドライバーを、どの組織が手放そうとするだろうか。その意味で、角田はどのチームにとっても幸運な長期的資産となっている。
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