マクラーレン失格で王座争い再燃―角田の立場はさらに厳しい状況に

yuki tsunoda las vegas 2025
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ラスベガスGP後に下されたマクラーレンのダブル失格は、今季のF1で最も衝撃的な裁定のひとつとなった。ランド・ノリスが手中に収めたはずのチャンピオンシップ優位は帳消しとなり、戦いの主導権は一気にマックス・フェルスタッペン側へ傾きつつある。そしてこの余波は、角田裕毅にも重い影を落としている。

マクラーレンの痛恨のミス

数時間にわたる審議の末、ノリスとオスカー・ピアストリはともに失格処分を受けた。理由は、ラスベガス特有の段差や路面変化によってマシンの最低地上高の設定が裏目に出てしまい、スキッドブロックが規定以上に摩耗したためだ。限られた走行データの中で攻めた車高を選んだことに加え、路面状況が急激に変化したことも影響した。

その結果、2人が獲得したはずの大量ポイントは消滅。ノリスは選手権リードを保ったものの、フェルスタッペンの勝利により勢いは完全に逆転した。

パドックは騒然となり、「2021年の再来か」との声すら上がった。“終盤での形勢逆転”というドラマが現実味を帯び始めたためだ。

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そしてこの展開は、角田の状況に別の意味で影を落とした。

角田にとってはまたも厳しい週末

ブラジルでの混乱から立て直しを図りたい角田だったが、ラスベガスでも序盤から苦戦を強いられた。

金曜日の時点で、レッドブルは角田のQ1におけるタイヤ圧設定のミスがあったことを認めている。今年たびたび発生している“片側ガレージのオペレーションエラー”の延長線上とも言えるミスで、評価がかかる重要な週末にもかかわらず、最も基本的な部分でつまずいた形だ。

「このミスが角田のチャンスを奪ったのではないか」と問われた際、ヘルムート・マルコ氏は淡々と答えた。

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「彼に謝ることしかできない。それだけだ」

決勝ではパルクフェルメ違反によりピットレーンスタート。序盤にハードタイヤへの交換を強いられ、渋滞の中でペースを示す場面も限られた。

ローラン・メキース代表はこう説明している。

「少しリスクを取った戦略を選んだ。彼のペースを示すため早めのピットストップを行ったが、ポイント圏に戻るには足りなかった」

この言葉からは、角田が純粋なポイント狙いよりもデータ収集役を任されていたことががうかがえる。実質的に、フェルスタッペンのためのテスト走行のような位置付けだったとも言える。

狭まった“チャンスの窓”

ダブル失格が出る前、一部のファンは「もしフェルスタッペンがタイトル争いから脱落すれば、角田の環境はもっと安定するのでは」と期待していた。2台目のマシンにも純粋なパフォーマンス指標が求められるようになると考えたからだ。

だが今回の裁定で状況は一変した。

フェルスタッペンが再び現実的にタイトルを狙える位置に戻ったことで、レッドブルの優先順位は明確になった。歴史的に見ても、タイトルの可能性がある限り、組織全体がフェルスタッペンの最大化に集中する傾向が強い。2台目の役割は実験的なセットアップや、戦略の犠牲要素を担う“流動的な役割”になりやすい。

角田は残り2戦、フェルスタッペンのパッケージ最適化に注力することが事実上決まった形だ。

難しいバランスの中で

角田の置かれた状況は、タイトルを争うチームでエースとは異なる役割を求められたドライバーが抱える、独特のプレッシャーを象徴している。これまでの逆境が彼を強くした面もあるが、その一方で本来の実力を十分に示す機会が制限されているのも事実だ。

過去には、2021年のアブダビでセルジオ・ペレスがフェルスタッペンのために奮闘し、当時チーム代表であったクリスチャン・ホーナー氏から「素晴らしい人間だ」と称賛された例もある。角田にも似た役割が求められる可能性があるが、彼にはペレスのような勝利経験や長年の地位はない。

現在メキース代表の影響力が増しつつあり、彼こそが角田の最も強い味方となり得る存在だ。レッドブルの長期的なドライバー構造の判断は経営陣が握っているが、メキース氏の評価は重要な材料になる。

ただし現状では、タイトル争いの再燃によって角田の役割はより明確になった。

レッドブルの最優先事項、“フェルスタッペンの5度目の王座獲得”に全力を尽くすことだ。

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