角田裕毅、レッドブルへの昇格のタイミングとその背景

レッドブルF1は、角田裕毅がレッドブルに昇格し、リアム・ローソンがレーシングブルズに戻ることを正式に発表した。これは日本グランプリを直前にしての決定だ。この決定は論理的な決定であると同時に、その時期については疑問も投げかけられている。なぜこのタイミングで、どのような理由でこの決定がなされたのか。
レッドブル公式の主張 チームの公式声明は、角田のマシン開発への貢献能力の高さを強調している。RB21は極めて運転が難しいマシンであり、マックス・フェルスタッペンだけがその真の性能を引き出せている中、角田のスキルは、イギリスのミルトン・キーンズにあるエンジニアたちと共に、問題を検証し解決することにおいて極めて重要とされている。
レッドブルの情報筋によると、角田は彼が持つ速さ、長年の経験、そして新たに得た成熟さを併せ持っており、目の前の大きな課題に対する準備ができていると判断された。
レッドブルのアドバイザーであるヘルムート・マルコ氏は、以前は角田のレッドブルチーム適性に賛成ではなかったが、中国グランプリ後に日本人ドライバーである角田を高く評価した。2025年シーズンが始まる時点での昇格が叶わなかった失望を、角田がどのように受け止めたかを認めた。
「角田はこらまでの数年間とは全く違う。角田は今、彼のキャリアの中で一番調子がいい」とマルコ氏はオートスポーツに語った。
「明らかに彼はマネジメントを変えた。アプローチがこれまでとは全く違う。より成熟している。時間はかかったが、その効果を発揮しているように見える。」
角田の昇格には、レッドブル内部から強力な支持があった。特にフランツ・トスト氏が重要な役割を果たした。F1で2番目に長くチーム代表を務めたトスト氏はチームのアドバイザーであり、常に角田の最も強力なサポーターの一人だった。トスト氏は、レッドブルが2024年末に角田ではなくローソンを選んだ際、明らかに不満を感じていたと報告されている。
過去4年間にわたる着実な成長に加え、専門家は常に角田の生まれ持った才能と彼が持つ素の速さを認めてきた。特に複雑なマシンのセットアップを理解し対応する彼の適応力は、2024年のアブダビ・ポストシーズンテスト中、レッドブルのエンジニアたちの注目を集めた。角田はRB20をテストし、そのセッション後にマルコ氏とクリスチャン・ホーナー氏の両方から称賛を受けた。
なぜ今なのか?
多くの関係者が今最も問いかけているのは—なぜたった2つのグランプリ後にこれほどの重要な決定がなされたのか?これは、リアム・ローソンのキャリアに長期的な影響を与える可能性のある、記録的なシーズン途中の交代だ。
この決定のタイミングはファンだけでなく、F1関係者の中でさえ、無慈悲に見える。特に多くの人が、角田が既に2024年末にシートを獲得すべきだと考えていたからだ。当時、レッドブルはローソンを選んだ理由を「より高い開発可能性」と説明していた。
しかし、ローソンは基本的な適応の問題に苦しみ、レッドブルのマネジメントは彼の能力に自信を失ったのだ。
ヘルムート・マルコ氏は、最初に角田ではなくローソンを選んだことは間違いだったとも認めた。オーストリアのメディアOE24に次のように語っている:
「角田は当時、あまりにも不安定だった。そのため、我々は全会一致でローソンを選んだ。しかし、高まる圧力の下で、ローソンは期待に沿った成果を出せなかった。そして彼は負のスパイラルに陥ってしまった。まるでボロボロになったボクサーのようで、そこから抜け出すのは非常に難しい。そう考えると、角田でなくリアムを起用したことは間違いだった」
要するに、レッドブルがリアム・ローソンのたった2つのグランプリ後に大きな決断を下した根本的な理由は2つだ。
ローソンのパフォーマンスに対する不安
レッドブルはシーズン開幕後すぐに、ローソンが期待に応えていないことに気がついた。マシン開発への貢献は見えたが、代わりに、基本的な適応の問題に苦しんでいた。RB21で快適に走る為より多くのサポートを必要としていた。これは以前セルジオ・ペレスが直面した問題に酷似しており、その結果が同じようなものになると仮定したのだ。そして、レッドブルは不振のドライバーを1シーズン起用するリスクを冒すことを望まなかった。
彼が恐れたのは、ローソンをチームに残すことでレッドブルの開発が遅れ、マクラーレンやメルセデスに追いつくのがより困難になることだった。ローソン自身は次のように認めている:
「僕にとっては単に時間の問題だ」
「残念ながら、僕には十分な時間はない。しかし、F1のマシンを運転するには、自分のしていることに100パーセントの自信がないといけない」
ローソンが日本のスーパーフォーミュラやレーシングブルズで自身の才能を証明した有望なドライバーであることは間違いないが、レッドブルは彼に必要な調整期間を与えなかった。彼の改善を待つ間に費やされる各レースが、チャンピオンシップを危険にさらすことを恐れたのだ。
レッドブルの社内権力構想、ホンダの影響、そしてホーナー氏が心を変えた理由
レッドブル内の有力者、特にフランツ・トスト氏が率いるドイツとオーストリアの勢力は、当初から角田裕毅を強く支持していた。しかし、クリスチャン・ホーナー氏は以前から、個人的および商業的な理由で、この移籍を阻止していた。
一部の関係者は、角田の昇格を許可することで、競合するドイツ・オーストリア勢力が強化されることを恐れての決定だと推測した。マックス・フェルスタッペンがすでにオーストリア陣営と連携し、ヘルムート・マルコ氏と親密な関係にある中で、2人目のオーストリア陣営の影響を持つドライバーが追加されることは、ホーナー氏の影響力をさらに弱める可能性があった。代わりに、彼はより管理しやすく、自身の影響を維持できるドライバーを選んだ。
ホーナー氏は以前から角田を熱心に評価していたわけではなかった。文化的・言語的な障壁が影響したと考える人もいれば、最初の出会いで角田が不適切な発言でホーナー氏を侮辱したという出来事が原因ではないかと考える人もいる。これは周冠宇のドライビングを侮辱する言葉を使った際の過ちと似ている。
さらに、ホンダからの財政的支援なしに角田を昇格させることに躊躇していた。レッドブルは独自のエンジン開発に高額な費用をかけており、ホンダが2026年にアストンマーチンとパートナーシップを組むという噂、さらにエイドリアン・ニューウェイ氏の離脱の可能性など、懸念が高まっていた。当初、2024年末にホーナー氏はホンダに接触し、角田のレッドブル昇格に伴う財政支援を要請した。ホンダは自社のアストンマーチンへの投資を優先し、これを拒否した。しかし、ドイツの情報筋によると、ホンダは最近再び接触を受け、今回は財政的支援を提供することに同意した。これが最終的にレッドブルの決定に拍車をかけた。
ホーナー氏の突然の意思変更は、単に角田の成績だけではなく、政治的動機が影響を大きく与えたと言える。レッドブルが内部の混乱に直面する中、ホーナー氏自身がプレッシャーを感じ始めチームの苦戦が続く場合の解決策の必要性を認識した。結局、角田の移籍を承認することで、ホーナーは戦略的にヘルムート・マルコ氏とフランツ・トスト氏が率いるオーストリア陣営に責任を委ねた。
ホーナー氏はレッドブル内での影響力を手放すことに長い間抵抗してきた。フェルスタッペンと並ぶ2人目のオーストリア陣営の影響を持つドライバーをチームに加えることは、彼の権威にリスクを与える可能性があった。しかし、RB21が扱いにくく、マクラーレンやフェラーリに遅れを取っている状況下で、ホーナー氏は決定せざるを得なかった。角田が成功すれば、彼は移籍を実現させた功績を主張できる。もし移籍が失敗すれば、責任をマルコ氏とオーストリア陣営に押し付け、レッドブルのドライバー決定に対する自身のコントロールを以前より強化することができると考えたのだろう。
結果として、ホーナー氏は事前に非難を回避しつつ—どのような結果になっても、自身の立場を確実に守rことができる策略をとったのである。
こらからの展望とホンダの戦略的勝利
PRの観点から見ると、これはホンダにとって戦略的な勝利と言えるだろう。日産との合併が失敗に終わった後、この決定により、ホンダは水曜日のショーランや鈴鹿でのグランプリなど、注目を集める絶好の位置に立つことができる。自社のF1への投資や日本のモータースポーツ、さらには自動車産業への貢献を、誇りを持ってアピールできる絶好の機会だ。
ホンダのF1での旅路は、スポーツから撤退するという最初の決定から、アストンマーチンのワークスチームパートナーとしての劇的な方向転換に至るまで、数多くの波乱に満ちていた。過去の誤算はあったものの、今、この瞬間こそが彼らにとっての転機となるだろう。
今、角田には結果を出さなけらばならないという圧力がかかっている。誰もが認めるようなドライブを見せ、史上最も成功した日本人F1ドライバーとしての評価を確立し、マックス・フェルスタッペンと並んで表彰台や優勝を勝ち取れれば彼の昇格は多くの人から認められるだろう。
レッドブルのマシンは世界で最も操縦が難しいマシンの一つであり、角田がマシンへの適応において厳しい戦いを強いられていることはさておき、日本グランプリを前にして下されたこの歴史的瞬間を祝福しよう。
そして、今回だけは自信を持って言えるだろう。 クリスチャン・ホーナー氏ついに正しい決断をした。
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