角田裕毅レース日誌:オランダGP

金曜日のスピン、土曜日の大健闘、日曜日の混乱・・・。2022年オランダGPでの角田裕毅を振り返り解説。

オランダグランプリ開催期間中の木曜日から日曜日まで、好天に恵まれたザントフォールトサーキット。降り注ぐ太陽と爽やかな風、20度から25度の過程きな気温。オランダのF1ファンは、地元出身のドライバーであるマックス・フェルスタッペンの優勝をビーチサイドにてビールとBBQでお祝いした。

木曜日

(プレスカンファレンスにてインタビューを受ける 角田裕毅)

角田裕毅はリラックスした様子でパドックに入った。この日、アレクサンダー・アルボンや、ランス・ストロールらと共に記者会見に挑んだ角田だが、記者からの質問はカルロス・サインツJr.とランド・ノリスに集中し、角田にとっては楽な会見となった。

(インタビューに対応する角田裕毅)

角田裕毅とチームメイトのピエール・ガスリーは共にトラックウォークを行い、ザントフォールト・サーキットの名物である急勾配バンクを確認した。

金曜日

(笑みを浮かべサーキットに到着した角田裕毅)

フリープラクティスがスタート、FP1は大きな問題もなく順調に終了、ロングランを何度か行い、マシンのセットアップに取り組んでいた。しかし、FP2 で角田はマシンのコントロールを失い、ターン10の終盤でコースオフ。赤旗中断となった。練習後の会見で角田は、突風でコントロールを失ったが、マシンに大きなダメージはなく、土曜日に向けてのいい準備になったと語った。

(移動中に談笑するチームメイトのピエール・ガスリーと角田裕毅)

土曜日

(会見にて質問を受けるフランツ・トスト)

この日の会見には、アルファタウリ代表フランツ・トスト、ウィリアムズ代表ヨースト・カピート、アルピーヌ代表オトマー・サフナウアーが出席。予想通り、記者からの質問の99%はオトマー(アルピーヌ)へ向けられた、”アロンソ、ピアストリの離脱”について、またその席を埋めるドライバーについての質問であった。一方、フランツ・トストへは「ガスリーが2023年にアルピーヌへ移籍後、角田がリーダーシップを発揮できるかどうか」という質問ひとつであった。

日曜日

(レース前、真剣な表情の角田裕毅)

角田のスタートは好調であった。しかし、ミック・シューマッハが角田のライン前をブロック、ランス・ストロールとエステバン・オコンが角田の外側のラインから追い抜き、角田とミック・シューマッハは 1周目に2つ順位を落とした。

ご存知の方もいるだろうが、コース幅が狭い事で知られるオランダ・ザントフォールトサーキットにおいては、オーバーテイクとポジション奪還は至難の業であり、1周目でポジションを奪われたのは大きな問題であった。そして11位を走る角田を、更なる不幸が襲い掛かった。

(レース前、レッドブルを片手に移動する角田裕毅)

ピットストップ後、ホイールが適切に取り付けられていないと判断した角田は、コース上で停止、再始動をさせて、チームのゴーサインをもってピットに戻った。しかし、コースに戻ってすぐ、今度はエンジニアもデータから異常を発見、デフの故障が確認され、ここで無念のリタイアとなる。

地元のヒーローであるフェルスタッペンにハンデを与えるような事態となり、角田をはじめチームの誰もが混乱したことは言うまでもなく、マシン異常の原因の特定を進めるチーム内にも混乱を引き起こした。

角田のリタイヤは、マックス・フェルスタッペンにピットイン、ルイス・ハミルトンのリードを許す結果となったバーチャル・セーフティカー(VSC)を引き起こし、オンライン上では陰謀論が巻き起こった。メルセデスのチーム代表は調査を要求し、メディアでも陰謀論が激しく議論された。この陰謀論の嵐はオランダGP終了後も数日続くこととなった。

結論

(レース後のインタビューに答える角田裕毅)

繰り返しになるが、角田にとっては良い点、悪い点が入り混じる週末となった。また一つ増えたリタイア、こうも続くリタイアは角田にとってなんの成長の糧にもならない。

FP2でのスピンは悪い点であり、角田とチームにネガティブな注目を集めた。しかし、土曜日の予選での素晴らしいパフォーマンスがそれを払拭した。

不運なリタイアでレースを終えた角田に対し、メディアも多少の同情を抱いたであろうが、陰謀論によって悪い意味で注目を浴びることになってしまった。

しかし今回初めて角田裕毅と実際に対面してみて(コロナの影響で彼の新人時代は見逃した)、新人時代と打って変わって、上達した英語を使い素晴らしいメディア対応をする姿に彼の成長を感じることができた。角田のフレンドリーでユニークな性格ゆえ、各国メディアからの好感度も高い。時にトラック上で納豆を食べる姿を目撃される角田に対し、各国女性ジャーナリスト陣からは「カワイイ」との声が聞かれた。

注目すべきは、誰もが「彼は速い」と言い、高く評価されている F1ドライバーであるピエール・ガスリーに着々と近づいていることだ。時よりミスも犯すが、それは角田に限った事ではない。彼は、チームラジオで積極的に技術面のフィードバックも共有し、マシンの改善点も知っている。そしてチーム代表のフランツ・トストも角田のリーダーシップの資質を認めている。

取り沙汰されている、2023年アルファタウリ契約更新問題の解決も時間の問題であろう。なんなら2年契約も夢ではない。

(レース後のインタビューに対応し、チームに戻る角田裕毅)


Similar Posts