角田裕毅、静かに示すレッドブルの未来への可能性

シンガポール発――日曜日のシンガポールグランプリで、角田裕毅には珍しいチャンスが訪れた。ウィリアムズの失格によりグリッドが繰り上がり、13番手からのスタートとなった角田は、マックス・フェルスタッペンと同じソフトタイヤを履いていた。しかし、その好機はすぐに崩れ去った。
角田自身が「キャリア最悪のファーストラップ」と呼んだスタートで、彼は4つものポジションを失った。17番手スタートのエステバン・オコンにさえ抜かれる始末だった。そこからのレースは、ダメージコントロールに終始することとなった。
14周目の早めのピットストップで1ストップ戦略に切り替えた角田は、しばらくクリーンエアを走行できたものの、ルーキーのフランコ・コラピントに阻まれ貴重な時間を失った。レース後半には、ジョージ・ラッセル、フェルスタッペン、そしてマクラーレンの両車から成る先頭グループに道を譲り、さらに数秒を失った。アイザック・ハジャーがエンジントラブルに苦しんでいたにもかかわらず、角田はオーバーテイクを仕掛けることができなかった。

さらに悪いことに、新品ソフトタイヤを履いたカルロス・サインツがレース終盤に追い抜き、10位で最後のポイントを獲得していった。
結局、角田は12位でフィニッシュした。ポイントは獲得できなかったが、ミスもなかった。そして何より重要なのは、12番手からスタートしたリアム・ローソンを上回り、15位に終わったローソンより前でゴールしたことだ。
抑制の指示
角田のレースは、彼が従っている特殊な指示を浮き彫りにした。スペアパーツが限られているため、角田は慎重に走り、マシンを傷つけず、完走させるよう求められている。その保守的な指示が、彼の控えめな予選ペースとあのようなスタートを説明する一因となっている。接触を恐れすぎているかのようだが、同時に過去11戦で深刻なクラッシュを起こしていない理由でもある。
その意味で、角田は2024年のセルジオ・ペレスとは対照的だった。ペレスの苦闘は、クラッシュ、感情の爆発、そして公然の非難で彩られていた。角田は冷静だった。指示に従い、オーバードライブの誘惑に抵抗し、無線でもメディアでも批判を控えてきた。
RB21は限界領域で非常に扱いにくいマシンであり、フェルスタッペンやヘルムート・マルコ博士でさえそれを認めている。シーズン序盤、パドック内の多くの関係者がフェルスタッペンのタイトル獲得は終わったと考えていた。しかし、セットアップの改善が彼の調子を取り戻させ、連勝とシンガポールでの2位という結果を出すと、レッドブルの優先順位は明確になった。フェルスタッペンがアップグレードを受け取る。角田はより少ないもので生き残ることを期待されている。
転換期のチーム
より広いチーム内の政治的な背景が、ラップタイムと同じくらい重要かもしれない。今年初めのクリスチャン・ホーナーの離脱は、レッドブル・レーシングの権力構造の再編を加速させた。オリバー・ミンツラフが最終的な監督権を握り、元フェラーリ副代表のローラン・メキースがCEO兼チーム代表に昇格した。
この再編で敗者となったのはヘルムート・マルコだ。かつてレッドブル育成プログラムのキングメーカーだった彼は、孤立を深めている。2026年までしか契約が残っていないマルコは、限定的なアドバイザー的役割に移行すると予想されている。ホーナーと長年連携してきたタイの大株主たちは、メキースにより大きな比重を置いている。彼の実用的なスタイルは、フェルスタッペン陣営を含む組織全体で支持者を獲得してきた。
この変化が重要なのは、次世代ドライバーを決定するのが誰かが変わるからだ。
角田の主張
角田がもたらしているのは、まさにメキースが重視する「経験」「安定感」「信頼性」だ。かつて元チーム代表のフランツ・トストから規律の欠如を批判されていた角田は、今では仕事に対する姿勢を称賛されている。無線での態度は成熟し、一貫性は向上し、ミスは減少した。
ローソンは依然として有力な対抗馬だ。速く、落ち着いているが、チーム内での信頼は低い。シンガポールのフリー走行での2度のクラッシュに続き、決勝で角田の後方に沈んだことは、彼の主張を助けることにはならなかった。
現時点では、レーシングブルズとシニアチームのレッドブル双方が角田をより高く評価している。そして、ホーナー後のレッドブルの内部政治において、その信頼性が決定的かもしれない。
今後の道のり
公式発表はまだない。しかし、角田は2026年シートをめぐってローソンに対して優位に立っているようだ。シンガポールは、その勢いを乱すことはほとんどなかった。
オースティンで再び評価が行われるが、本当の舞台はメキシコになると予想されている。レッドブル関係者は、そこで将来のラインナップに関する重要な発表があると期待している。
角田にとって、方程式は明確だ。ミスを避け、チームの優先事項を尊重し、主要な内部ライバルであるリアム・ローソンより前でフィニッシュし続けること。最も華やかな道ではないが、今日のレッドブルにおいては、それがF1の未来における彼の地位を確保する道かもしれない。
【関連記事】
- レッドブル2026年シート争い マルコがハジャーを支持
- ハジャー、2026年リセットを前にレッドブルの将来を見据える
- 角田、7戦連続ポイント獲得なし レッドブル残留の行方は?
- Part 2: 角田裕毅、2026年レッドブル残留をかけた重要な夏休み
- 角田裕毅がHexCladとスポンサー契約|愛用キッチンウェア5選でプロ級の料理体験を