「未来のF1エンジニアを育成|夢をかなえるSTEM Racingとは」

F1ドライバーを目指す──多くの子どもたちにとって、それは憧れの夢だ。
現在レッドブルレーシングで活躍中の角田裕毅も4歳のころにカートからキャリアをスタートした。
しかし、F1の世界にはもうひとつ大きな夢がある。それが「F1エンジニア/イノベーターになる」という道だ。マシンを速くし、勝利を支えるエンジニアやイノベーターの存在なくして、ドライバーの活躍は成り立たない。
そんな未来のエンジニア/イノベーターを育てる教育プログラムが、F1が後援する 「STEM Racing」 だ。
STEM Racingとは?
F1が後援するグローバル教育プログラム「STEM Racing(旧F1 in Schools)」とは何か。
「科学(Science)」「技術(Technology)」「工学(Engineering)」「数学(Mathematics)」の頭文字を組み合わせたものだ。これらの分野を横断的に学び、統合的な思考力や問題解決能力を育む。これのテーマをF1に当てたものが「STEM Racing」だ。
6〜19歳の学生が、自ら設計・製作したミニチュアF1カーを用いて競技を行う教育プロジェクトで、エンジニアリングや物理学、チーム運営、マーケティングまで幅広い学びを得られるのが特徴だ。単なる模型づくりにとどまらず、まさに“実践型のSTEM教育”といえる。
STEM Racingの成り立ちと特徴
STEM Racingは2000年代初頭に始まった「F1 in Schools」を前身とし、2024年に改名された。名称は変わっても、F1コミュニティの強力な支援は継続されており、世界中の学生に挑戦の場を提供している。参加者はCAD/CAMソフトを使ってマシンを設計し、3DプリンターやCNC加工機で製作。完成したマシンは圧縮空気で走行させ、スピードや空力性能を競う。
しかし競技は速さだけに収まらない。チーム運営、ブランド戦略、スポンサー獲得、さらにはプレゼンテーション能力も評価対象となるのだ。理系も文系も活躍をすることができ、技術とマネジメントを両立させる総合力こそが、STEM Racing最大の魅力と言える。
インターンシップとの違い
インターンシップとの違いを比較してみよう。例えばフェラーリの場合、メカニックのインターンシップの条件として、「1年以内に卒業した修士号か博士号を取った工学科の卒業生」が最低条件である。
通常、メカニックなどのインターンシップは専門課程を修了、あるいは在学していることが前提となるため、スタートは比較的遅い。一方でドライバーは、4歳からカートで競技を始めるケースもあり、キャリアの出発点は圧倒的に早い。
しかし「STEMRacing」は、こうした年齢や経歴に左右されず、6歳からF1の世界に触れることができる画期的な仕組みだ。
世界規模の広がり
現在、STEMRacingは60カ国以上、29,000校で実施され、累計180万人以上が参加している。レッドブルやマクラーレン、アルピーヌ、ウィリアムズ(コマツ)もこのプロジェクトに貢献している。ジュニアドライバーチームならぬ、ジュニアF1運営チームのようなものだ。
驚くことに、参加者の約3分の1が女性であることも特筆すべき点で、STEM分野におけるジェンダーギャップ解消にも寄与している。各国大会を勝ち抜いたチームは「ワールドファイナル」に進出し、国際舞台で競い合う。ここからモータースポーツや航空宇宙、自動車産業に進む人材も少ない。
STEM Racingは、F1のスピードと技術を教材に、次世代の科学者やエンジニアを育てるユニークな教育プログラムだ。日本ではまだ知名度は高くないが、参加を通じて得られる学びは将来のキャリア形成に直結する。F1を通じて育まれる挑戦心と創造力が、未来の産業を支える原動力となるだろう。
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