雨と高まる緊張感―F1、ブラジルGPでサンパウロに帰還
F1は今週末、シーズン屈指の熱気に包まれるサンパウロでのブラジルGPに向かう。そして今回はスプリントフォーマットの週末。つまり、準備時間は限られている。金曜日の午前に1回のみのフリー走行を行ったのち、午後にスプリント予選。そして、土曜日にスプリントと本戦予選、日曜日に決勝レース、と過密なスケジュールで展開される。
海抜約700メートルに位置するインテルラゴス・サーキットは、希薄な空気がターボ性能やエンジン冷却に影響を及ぼし、各チームにとって大きな挑戦となる。鍵になるのは、ストレートでの高速性能と、テクニカルなインフィールドでの安定性。このサーキットは繊細なバランスを要求するのだ。ピレリは昨年より1段階硬いコンパウンド(C2、C3、C4)を選択。路面温度が下がれば、タイヤのウォームアップが困難になる可能性がある。天気予報は昨年のような“混合状態”の再現を示唆しており、金曜は激しい雨、土曜は小雨、日曜の決勝はおおむね晴れとされている。

雨は今週末を通して最大の焦点となる。金曜は小雨の予報、土曜にはスプリントレースと本戦予選の両方で激しい雨の可能性が最も高い。各チームはウェット走行への備えと、日曜の決勝がドライになる可能性を見越したセットアップのバランスに頭を悩ませるだろう。そして、スプリント中のクラッシュ回避は極めて重要だ。わずかな損傷でも日曜のグランプリ戦略に影響を及ぼす恐れがある。刻々と変化するコンディションの中で、グリッド上の混乱はほぼ避けられない。どのチームとドライバーが最も速く状況に適応するか、これが勝負の分かれ目となる。
また、1コーナーと4コーナーではオーバーテイクのチャンスがある。不安定な天候が常にレースを左右するインテルラゴスでは、波乱が起きやすい。昨年は43回のオーバーテイクが記録され、ランド・ノリスが雨に翻弄されながらもポールポジションを獲得。このサーキットでは、いかに運命が素早く揺れ動くかを示している。
今週末の注目ポイント
チャンピオンシップ首位のノリスは、チームメイトのオスカー・ピアストリにわずか1ポイント差でリードしている。しかし、予測不能な天候が、チーム内対決を戦略的な賭けへ変える可能性がある。圧倒的な勢いを見せているマクラーレン勢だが、スプリントフォーマットによる限られた時間は、セットアップミスの余地をほとんど残さない。
レッドブルはメキシコでの困難な戦いを経て、巻き返しを図る。マックス・フェルスタッペンは新しいフロアアップグレード後のマシンバランスに苦しんだが、インテルラゴスは伝統的に彼のスタイルに合うサーキットであり、特にウェットでは強さを発揮してきた。一方で、注目はチームメイトの角田裕毅にも集まる。彼は直前の週末で、シーズン最高のパフォーマンスを見せたばかりだ。

角田はメキシコでポイントこそ逃したものの、印象的な走りを見せた。フェルスタッペンがマシンの不安定さと格闘する中で、彼は冷静さと高い適応力を示した。角田のリズムベースの走りと、低グリップ条件での自信は、再びブラジルでも注目すべき要素だ。昨年はレーシングブルズで予選3番手、決勝7位という結果を残している。雨の予報とレッドブルのセットアップ調整が続く中、角田は再び“今週末の静かなスター”の1人として浮上する可能性がある。
雨、高度、そして容赦ないスケジュール。そのすべてが、インテルラゴスでの不安定で高リスクな週末を約束する。1つの判断ミスが、日曜までにチャンピオンシップ争いと見出しの両方を塗り替えるかもしれない。
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