ザウバー代表、度重なるクラッシュで「限界的な状況」に シーズン終盤の舞台裏を明かす
24戦という長丁場で争われた2025年のF1シーズン終盤、チームや関係者の疲労は誰の目にも明らかだった。オースティン、メキシコシティ、サンパウロ、ラスベガス、カタール、アブダビの6戦がわずか8週間に詰め込まれ、移動と時差調整が続く中、タイトル争いも最終戦までもつれ込んだ。
その中で、今冬からアウディへの移行を控えるザウバーにとって、問題は単なる疲労にとどまらなかった。チーム代表のジョナサン・ウィートリー氏はアブダビで、シーズン終盤に深刻なスペアパーツ不足に直面していたことを明かした。
2026年に全面的な技術レギュレーション変更を控える現在、2025年型マシンは事実上「最終世代」にあたる。そのため各チームは、まもなく不要となる部品への投資を抑え、交換用パーツの生産も最小限に留めていた。シーズンが進むにつれ、開発の主軸は次世代マシンへと移行し、在庫にはますます余裕がなくなっていった。

こうした状況の中、シーズン後半に相次いだクラッシュがザウバーを追い詰めた。ウィートリー氏は当初、その深刻さを詳細には語らなかったが、次のように振り返っている。
「非常に厳しい3連戦を終え、時差も重なって本当に大変だった」とウィートリーは語った。「それでも我々は直近2レースで9位に入り、これまで話してこなかったダメージからも立て直してきた」
さらに踏み込んで問われると、状況はより切迫していたことを認めた。
「クラッシュによるダメージがあまりにも大きく、我々は限界的な状況にあった」とウィートリー氏は明かした。「それでもチームは素晴らしい結束力を見せてくれた。現地だけでなく、ファクトリーで部品を手配してくれたスタッフも含めてだ。チーム代表として、これ以上何を望むというのか」
ウィートリー氏は、どの部品が特に不足していたのか、あるいは実際にどこまで追い込まれていたのかについては明言を避けた。ただし、転機となった可能性が高いのはブラジルGPだとみられる。この週末にはルーキーのガブリエル・ボルトレートが2度の大きなクラッシュを喫し、ウイングやサスペンションを複数失った。さらにラスベガスではボルトレート、カタールではニコ・ヒュルケンベルグにもアクシデントが起き、状況は一層厳しくなった。それでも最終的に、ザウバーの予備パーツは辛うじて持ちこたえたという。

こうした事態は、コストキャップ時代のF1では珍しいものではない。レッドブル・レーシングでも、シーズン終盤に限られたスペアパーツがタイトル争いを戦うマックス・フェルスタッペンに優先的に割り当てられ、角田裕毅が旧仕様のフロアを組み合わせたマシンで走行した例があった。アブダビ最終戦では、資源管理の厳しさが競争力に直結する現実が、改めて浮き彫りになった。
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