リカルド、F1のその先で見つけた「もう一度の幸せ」
ダニエル・リカルドが最後にF1グランプリを走ったのは、2024年のシンガポールだった。そして翌2025年、モンツァで彼ははっきりと区切りをつける言葉を口にする。「もう僕はレーシングドライバーではない」かつて“笑顔のアイコン”としてF1の世界を彩ったリカルドは、キャリアの終わりを静かに受け入れていた。
レッドブル復帰という最後の目標
2024年、リカルドの目標は明確だった。レーシング・ブルズで結果を残し、2025年に向けて再びレッドブル・レーシングへ。マックス・フェルスタッペンの隣に戻ること。しかし、そのシナリオは実現しなかった。レッドブルは「十分見た」と判断し、シンガポールGPを最後に彼をF1のシートから外す決断を下した。36歳となったリカルドは、その後レギュラーシートを得ることなく、こう語っている。
「僕のキャリアは終わった」
ドライバーズ選手権最高位は2014年と2016年の3位。華やかな勝利と同時に、後半戦では苦悩と葛藤も味わったF1人生だった。
表舞台からの距離、そしてフォードとの再会
引退後、リカルドはしばらく公の場から距離を置いた。だが2025年9月初旬、彼の新たな役割が明らかになる。フォードのグローバル・ブランドアンバサダー就任だ。「レーシングドライバーとしてのキャリアは終わりました。でも、タイヤの付いたものすべてへの愛は消えません」彼がフォードと組む理由は、単なる契約ではなかった。
2017年、アメリカで家を買う前に購入したフォード・ラプター。レッドブルとフォードの提携発表後に訪れたディアボーン本社での出会い。デザイン部門の舞台裏、ケルンでのクラッシュテスト見学、社員との対話。そこにあったのは、勝利至上主義だけではない
「楽しむこと」を忘れないモータースポーツ文化だった。

レースから自由になって見えたもの
「レースは、僕にとって常に“楽しむこと”だった」F1で感じ続けてきた重圧から離れ、人生は大きく変わった。
自分のための時間。旅と、家族や友人との穏やかな日々。そして、増え続けるフォード・ラプターの走行距離。「今はプレッシャーがない。心の整理がついた」フォードのアンバサダーとして、F1からダカール、ル・マン、バサーストまで。モータースポーツと関わり続けながらも、かつてのように結果に縛られることはない。
「幸せ」を探し直した先で
CQ Sportsのインタビューで、リカルドは率直にこう締めくくっている。「自分の幸せを、もう一度見つけなければならなかった。少し時間はかかったけど、今は自分の居場所が分かっている」
F1という頂点から降りたその先で、ダニエル・リカルドはようやく“自分のペース”を取り戻した。それは引退ではなく、人生の次のステージへのシフトだったのかもしれない。
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