サー・ジャッキー・スチュワート氏、約60年ぶりに富士へ ― 「Race Against Dementia」チャリティガラが開催
静岡・富士スピードウェイで9月25日夜、認知症研究支援チャリティ「Race Against Dementia」のガラディナー「Fuji 60 — Racing for Memory」が開かれた。FIA世界耐久選手権(WEC)「6 Hours of Fuji」の開催週末の幕開けを飾るこのイベントには、参戦チームやメーカー、ドライバーたちに加え、日本の財界・文化人も顔をそろえた。
会場となった富士スピードウェイホテルの宴会場には、13卓・105名のゲストが集った。主催はHersey Shiga Global株式会社で、Race Against Dementia、FIA世界耐久選手権との共催という形をとった。同チャリティが日本でガラディナーを開くのはこれが初めてとみられる。
主役は、1966年10月にこの富士のサーキットで「富士200マイルレース」を制したサー・ジャッキー・スチュワート氏。当時27歳、駆るマシンはローラT90で、サーキットが完成してからわずか9か月というタイミングでの勝利だった。その後、彼はF1世界選手権を3度制覇し、モータースポーツの安全性向上運動を主導した人物としても知られる。優勝トロフィーは今も本人が保管しているという。
スチュワート氏がRace Against Dementiaを設立したのは、2016年に妻レディ・スチュワートが認知症と診断され、「治療法もなく、進行を止める方法もない」と告げられたことがきっかけだった。同チャリティは、モータースポーツで培われたハイパフォーマンスの手法を研究支援に応用し、世界各地の有望な若手研究者に資金を提供するとともに、リーダーシップやパフォーマンスに関するコーチングも行っている。
息子とともに登壇、60年前の記憶を語る
ステージには、Race Against Dementia理事会議長を務める息子のマーク・スチュワート氏とともに登壇。司会はモータースポーツ実況者の伊藤ソニア氏、日本語進行は山咲こむぎ氏が務めた。1965年のル・マンや1966年の富士でのアーカイブ映像・写真がスクリーンに映し出され、その中には日本人写真家ジョー・ホンダ氏が富士で撮影したカットも含まれていた。

マーク氏は、母の診断がきっかけとなったチャリティ設立の経緯に触れ、「チームワーク・革新・粘り強さ・細部へのこだわり」というモータースポーツから受け継いだ4つの価値観について語った。認知症の治療法探求そのものを、彼は「一種の耐久レース」になぞらえた。
このほか、フランス西部自動車クラブ(ACO)会長のピエール・フィヨン氏がWECを代表して挨拶に立ち、主催者であるHersey Shiga Global社長(兼Ceremony株式会社社長)の志賀司氏が歓迎の言葉を述べた。
出品作にはドライバーの物語も
夜のハイライトは、耐久レース界から寄せられた品々によるチャリティオークション。会場内での競売ではなく、全ロットがオンラインに掲載され、入札はレースウィーク中ずっと受け付けられる。
締め切り-9月27日(日)日本時間21時(英国時間13時)
オークションページ:
https://superstars-auctions.com/6hoursoffujiinaidofraceagainstdementia
目玉となったのは、ニック・デ・フリース選手が寄贈したヘルメットだ。サーキットで撮影された本人のビデオメッセージとともに紹介されたこのヘルメットには、桜とスチュワート家のタータン柄、そして「金継ぎ」— 壊れた部分を金で継ぎ、その継ぎ目こそを美として際立たせる日本の伝統技法 — をモチーフにした富士スペシャルデザインが施されている。デ・フリース選手は日曜のレースでこのヘルメットを実際に着用し、レース後にサインをしたうえで落札者に贈られる。
Team WRTのアウグスト・ファルフス選手とアイアン・リンクスのマキシム・マルタン選手は、それぞれ自身が寄贈したレーシングスーツを本人の手でステージに運んだ。プジョーからは、2025年シーズンのドライバー全員のサイン入りとなる9X8ハイパーカーの実戦使用済みリアボディワークパネルが出品され、Stellantisモータースポーツのチーム代表エマニュエル・エノー氏が紹介した。

日本にゆかりの深い一品も並んだ。1995年のル・マン24時間レースでマクラーレンF1 GTR(59号車)を駆り、日本人ドライバーとして初優勝を果たした関谷正徳氏にまつわる品々だ。当時現地で取材していた写真家・蓮井幹生氏が優勝30周年を記念して制作した限定書籍『Jet Black 59』と、蓮井氏自らが手焼きした写真をセットにしたロットが2組出品され、いずれも関谷・蓮井両氏のサイン入り。さらに、ゴールライン通過直後の姿を再現したミニカーと同書籍をセットにした一点ものも用意された。これらはゴードン・マーレー・オートモーティブ・ジャパンの石川健氏と蓮井氏本人がステージで紹介し、関谷氏自身もレセプションに姿を見せ、写真にサインを添えていた。
このほか、山梨のワイナリー「Sollevigna」による初ヴィンテージのワイン3本セット(グルナッシュ、シャインマスカット、マスカット・ベーリーA)も出品された。かつてKisvinワイナリーに在籍したヘッドワインメーカー、斎藤まゆ氏がボトルの首元一つひとつにサインを施し、手書きメッセージカードを添えたという。トヨタからは、GR010 HYBRIDに実際に使用された鍛造RAYS製ホイールや、2026年ル・マン24時間レースのサイン入りグッズが並んだ。
会場には、Cadillac Hertz Team JOTA、Team WRT、アイアン・リンクス、ミシュラン、グッドイヤー、TotalEnergies、プジョー、ポルシェ・カレラカップ・ジャパンなど、参戦チーム・パートナー企業の関係者も顔をそろえた。
三味線の音色と誕生日の祝福
ディナーは、津軽三味線奏者・川崎まなみ氏の演奏で幕を開けた。同氏は全国津軽三味線コンクールのデュオ部門で2025年に3年連続優勝を果たした実力者だ。さらに、Tstyleのゲストとして招かれた振袖姿の女性4名が会場に彩りを添え、日本の伝統文化の美しさを来場者に印象づけた。
ゲストたちは、スチュワート氏の富士制覇60周年を祝して乾杯。翌日のレースを控えたTeam WRTのドライバー、ダレン・レオン選手はこの夜が誕生日にあたり、ステージから祝福を受けた。スチュワート氏はイベントの間ずっと会場に残り、集合写真の撮影前には一人ひとりのゲストと言葉を交わした。
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