2024年のプレシーズンテストを終えた今、重要な5つの問い
今シーズン最も忙しい週末
バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたこの3日間の走行は、F1チームにとって今年もっとも濃密なものとなった。各チームは来週同サーキットにてシーズンが開幕する前に、どれだけそれぞれの新マシンをテストし、分析できるかという戦いに挑んでいた。
毎日8時間の間、各チームはセットアップの変更、コンフィギュレーションの変更を重ねた。メルセデスは3日目にフロントサスペンションのアッパーウィッシュボーンの一部を動かす実験まで行ったが、これは週末のレースでは不可能な変更である。また、これらの変更の中で、まだサーキットにおいて使用していない部品に負荷をかけていく。
チーム総走行距離は約20,000kmで、これは地球を半周する距離に相当する。多くのスタッフが夜のうちにバーレーンからヨーロッパの各拠点に戻り、朝一番から週末にかけてデータを集計する。
データから傾向を予測
テストでの最終的な順位を鵜呑みにするのは賢明ではない。周 冠宇はテスト終盤にキック・ザウバーで3番手タイムを記録したが、来週末の初戦でそのポジションにいる可能性は低いだろう。
同様に、レッドブルはマックス・フェルスタッペンが4番手で、フェラーリのシャルル・ルクレールがトップだったが、これも正確なポテンシャルを反映した順位ではないだろう。
全チームが異なるテストプログラムを実施し、異なる燃料負荷、低いエンジン出力レベル、さまざまなボディワークのコンフィギュレーションを使用した。しかし、シーズン序盤に何が予想されるかを予測するのに役立つ、いくつかの傾向が現れている。
王者レッドブルの実力は?
現行レギュレーションに対する最適解と広く受け止められているレッドブルのRB20の素晴らしさに感銘を受け、若干の不安を覚えない人はいないだろう。そして、テストでのそのパフォーマンスは、その評判に少しも水を差すものではなかった。
現役ワールドチャンピオンのマックス・フェルスタッペンは、このマシンが非常に強力なマシンであることを即座に理解し、テスト序盤からバーレーン・インターナショナル・サーキットで華麗にマシンを操ってみせた。
表向きにも非公式にも、非常に多くの変更が加えられていることを考えると、このパッケージを理解するためにはまだやるべきことが残っている。しかし、このプロジェクトの初期段階であっても、チーム内部や、他チームとの相対的なポジションを示すデータを持つライバルたちから感じられるのは、今年のレッドブルをその座から引きずりおろすには何か特別なことが必要だということだ。
トップは維持も差は縮小か
データによると、レッドブルは1周で後続を0.22秒引き離している。これは、マシンを限界近くまでプッシュしていない3日間での結果に基づいている。ここ数年そうであるように、レッドブルは中速コーナーが最も速いので、来週末のバーレーンGPではセクター2で強さを発揮してくれるだろう。
フェラーリはトップとのギャップを縮めたのか?
チームはあまり興奮しないようにしているが、彼らの2024年型マシンは、パフォーマンスという点では一歩前進しており、さらに重要なのは、先代よりも運転しやすく予測しやすいということだ。これは、シャルル・ルクレールとカルロス・サインツの両ドライバーがマシンのコントロールを失う心配なく限界を探ることができることを意味する。
これは冬前からフェラーリのドライバーたちにとって第一の優先事項だったため、シミュレーターでマシンを試し、バーレーンで実車のステアリングを握ったとき、マシンは彼らが求めていたものに近づいていたということは彼らにとって当然大きな意味があったはずだ。
デグラデーションが改善
もうひとつ改善されたと思われるのが、タイヤのデグラデーションだ。昨年のフェラーリは予選でルクレールとサインツが7回のポールポジションを獲得する快走を見せたが、レースでは同じペースをコンスタントに発揮することができなかった。これはマシンがタイヤに対して厳しすぎることが原因で、昨年はドライバーにライバルより多くのピットストップを強いたり、スティント後半で後退せざるを得なくなっていた。
しかし、テストで収集したデータからフェラーリは大きな飛躍を遂げ、レースシミュレーションではレッドブルに約0.2秒差に迫っている。1周で少し離されるが、それでもレッドブルとの差はたった0.2秒だ。
つまり、フェラーリはレッドブルに次ぐ2番手で、レースセットアップではレッドブルに近づいているようだ。最終的に大きなポイントは日曜日に獲得するものなので、この変化はより重要である。
メルセデスはついに正しい方向へ?
まだ始まったばかりだが、圧倒的な強さを誇るレッドブルに敵わないマシンに苦しめられた2年間を経て、メルセデスは正しい道に戻ってきたと慎重に楽観視している。
昨年の今ごろは、ルイス・ハミルトンもジョージ・ラッセルもマシンが十分ではなく、シーズン終了までに問題を修正するのは不可能に近いとすぐに理解していた。しかし、今回の彼らの足取りは軽やかだ。
テクニカルチーフのジェームス・アリソンによると、チームはレッドブルの後方で、フェラーリやマクラーレンと2位争いにいるという。そして、前車ではできることが限られていたのに対し、W15のプラットフォームは年間を通してパフォーマンスを向上させる余地を与えてくれるはずだと付け加えた。
データでは、彼らがテスト中に最も力を注いだレースペースでは2番手、1周のペースでは4番手と少し後退している。まだ彼らが望むところではないが、トンネルの先には光が見えているようだ。
昨季のサプライズ、マクラーレンとアストンマーティンの順位は?
マクラーレンにとって、今年のバーレーンテストはかなり快調だった。昨年は妥協の産物だとわかっていたマシンに縛られ、苦しいスタートが予想された。
しかし、オーストリアで見事なアップグレードを施して以来、チームはそこに逆戻りすることを感じさせず、バーレーンでのパフォーマンスはこの冬を通してさらに一歩前進したことを示唆している。
クラッチの問題で3日目のランド・ノリスの走行が大幅に制限されるなど、いくつかのつまずきはあったが、修正策を見つけ、オスカー・ピアストリにはレースシミュレーションを行う時間があった。
予選のペースは決勝のペースよりも良かったが、その差はほんのわずかで、その結果彼らはそれぞれ3位と4位となり、チームがいきなり表彰台を狙えるという議論に重みをもたせることとなった。
昨年は見事なマシンで周囲を圧倒し、レッドブルの主要ライバルとなったアストンマーティンにとっては、それほど強力なテストではなかった。昨年は5位でフィニッシュし、今季のスタートもこの順位に留まりそうだ。
ランス・ストロールのレース走行は2日目も特筆すべきものではなかったが、最終日のフェルナンド・アロンソのレースシミュレーションは注目に値するもので、ストロールが試した2日目と同じセッティングでC1(来週末のバーレーンGPで使用されるハードタイヤ)のデグラデーションを減らすことができた。
残りのチームの力関係は?
以前はアルファタウリとして知られていたF1チームであるRBは、3日間のテストを通じてマシンがほぼ問題なく走行したため、新名称での初テストに満足している。しかし、テスト最終日にダニエル・リカルドがメディアにコメントをするなか、首脳陣はあくまで期待を上げないようにしている。
データによると、次の週末はアストンマーティンに0.12秒差で迫り5番手となる見込みだ。しかし、昨シーズン終盤までハードなマシン開発を行っていたことを考えると、現実にはシーズン序盤ではそれほど強くないことが予想される。
そのほか、ウィリアムズはメカニカルな問題に見舞われ、走行時間を犠牲にするという波乱のテストとなった。しかし、マシンのコンセプトを大きく変えたことを考えれば、これは予想されたことだ。
昨年のテストでは、セクター1と3で2024年よりも速いタイムを出していたが、今回は3セクターでよりバランスが取れていた。これは、リアが滑りやすいモンスターマシンではなく、よりオールラウンダーで、すべてのレースで競争力を発揮するマシンを作ろうという計画が功を奏したことを示唆している。
最終日に行われたアルボンのレースシミュレーションは前向きなもので、アルボンはチームをシミュレーションを行ったチームの中で5番手へと押し上げた。新車について学ぶことが多いのは間違いなく、それゆえに成長痛のようなものもあるかもしれないが、ポテンシャルは大きい。
最も予想しずらいアルピーヌ、最後尾で食らいつくハース
チーム代表のギュンター・シュタイナーとテクニカル・ディレクターのシモーネ・レスタのふたりを失うというトリッキーな冬を過ごしたハースは、今季に向けて少し問題を抱えているのではないかと懸念されていた。しかし、新代表である小松礼雄はチーム安定させるために動き出し、彼らはこれまでで最もスムーズなプレシーズンテストのひとつを楽しんだ。
ハースは最も多くの周回数をこなし、予選とレースシミュレーションの両データで遅れをとったが、少なくとも離されることなく集団にしがみついている。
アルピーヌは最も予想しづらいチームのひとつだろう。プレシーズンをきわめて慎重に過ごしてきた彼らは、楽観的だったがその期待に応えられなかった昨年とは正反対のアプローチで、再び中団にいるように見える。
キック・ザウバーはテストが混乱し、いくつかの小さな問題を抱えたが、ハースよりペースは良く、ウィリアムズと争っているようだ。
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