エミレーツ航空のF1スポンサーシップ契約終了か…しかしF1側には既に別のオファーが。

F1とエミレーツ航空のスポンサーシップ契約が終了に近づいている。F1の内部事情に明るいRacingnews365によると、別のスポンサー候補は既に用意されているようだ。

エミレーツ航空がF1と締結している今のスポンサーシップ契約はエミレーツ航空側に有利なものだとされているが、2022年シーズン終了時に契約満了となる。アラブ首長国連邦(UAE)のフラッグキャリアの1つであるエミレーツ航空は2013年シーズンからF1のパートナーを務めており、現在の契約は18年に結ばれたもので22年末となっている。

エミレーツ航空はタイトルスポンサーやコース脇広告、ファンゾーン、顧客へのVIP観戦体験提供など、グランプリにおいて多大なブランディングやマーケティング機会を得てきた。

F1は契約延長に向けて現契約の倍額となる年間2,500万ドルのスポンサーシップ契約を提案していたと言われている。内部情報筋によると、エミレーツ航空はその提案を拒否し、同業他社へのセールスをF1に許可したようだ。比較対象となる数値の1つとして、ハースF1チームがマネーグラムと結んだ年間2,000万ドルとされるスポンサー契約をあげることができる。F1の中でも特に価値の大きい現契約の条件を鑑みると、2,500万ドルの提案が決して悪い条件ではないと分かるだろう。

新たな契約がそこには既に

メジャースポンサーの離脱が見通せる状況である一方、それは別の中東系航空会社との契約の可能性が生まれることを意味している。

DHLやハイネケンといったグローバルトップブランドが名を連ねるF1トップスポンサーはグローバルパートナーと呼ばれている。その中にカタール航空が加わるのではないかと考えられている。

カタールでのF1は2021年に初めてグランプリを開催。22年はFIFAワールドカップが開催されるため実施なしとなっている。

カタールグランプリは23年に復活予定。当初予定されていたストリートサーキットではなく、ロサイル・インターナショナル・サーキットでの開催が見込まれている。

新たな契約は誰もが納得できるという状況に

エミレーツ航空はこれまでのスポンサーシップ契約において大きな価値を享受してきた。特にここ数年のおける世界各地でのF1人気拡大の波に乗ったと言える。シンガポールグランプリにおけるシンガポール航空の存在などもあり、エミレーツ航空はF1カレンダー上における全レースのコアスポンサーではなかった。だが、ブランド力向上やドバイの中東におけるハブ空港としての価値拡大というエミレーツ航空がスポンサーシップのゴールと設定してきたものは既に達成したと考えられている。

一方カタール航空もエミレーツ航空が2013年にF1に参入してきた時と同様の野心を持っている。そして、新たな契約実現に向けた必要な要素は既に揃っているようだ。

カタールには天然資源を原資とした豊富な資金力や、ワールドカップ開催という栄光、2023年からのカタールグランプリ開催予定など十分な条件が整っているだけでなく、さらにF1との綿密なコミュニケーション体制も出来上がっている。

カタールはF1のCEOを務めるステファノ・ドミニカリと前職であるランボルギーニ時代から関係が深い。ランボルギーニはアウディ・グループのブランドの1つであり、アウディは新たなパワートレイン規定が導入される2026年からのF1参入が予定されている。

さらに重要なこととして、アウディは世界最大の自動車メーカーの1つであるフォルクスワーゲン・グループの一部である。カタール投資庁はフォルクスワーゲン・グループの17%の株式を保有している。

カタール航空がF1コアスポンサーのポジションをエミレーツ航空から取って代わることは間違いないだろう。契約締結への資金力は十分で、野心的なブランディングやマーケティング戦略といったスポンサーシップの価値最大化に向けた経験も豊富である。