【シガスポーツ独占!】ウィリアムズF1チーム代表、ジェームス・ボウルズへのインタビュー全容

オーストリアGPにてシガスポーツは、2023年シーズンからウィリアムズF1のチーム代表を務めるジェームス・ボウルズに独占インタビューする機会に恵まれた。新チーム代表としての彼の挑戦や一貫したチームの文化を作り上げる大切さ、また二人のドライバーに対するサポート体制などについて話を聞いた。以下ではインタビューの全容を紹介する。

Q. 今年1月にチーム代表に就任されましたが、これまでの進捗はいかがですか?

「私が参加する前に、チーム代表になったら変えたいと思っていたことは、そうですね、今現在私たちが行っていることだと思います。ファクトリーに多額の投資をすることです。100万や1000万ではなく、1億ドル(約110億円)といった額です。参加前、私だったらもっと早い段階で投資をしていたと思います。早ければ早いほど効果が大きかったと思うので。」

Q. それはなぜでしょうか?

「理由はいくつかあります。一つはチームの風習です。私が参加した時、チームは失敗することをとても恐れていました。私が考える価値観においては、こういった挑戦を仕掛けた時に生じた失敗なら全く問題ないと思うのです。その失敗から学べば良いので。」

「もちろん、不注意や努力不足で生じた失敗は問題で、また別の話です。」

「私は、失敗はこのスポーツの一部だと考えていて、挑戦を仕掛け続けなくてはいけないと思っています。なので、最初に変えなくてはいけないと考えたのはチームの風習でした。風習や価値観を変える、と簡単に言ってもそれ自体が勝手に変わるわけではありません。行動(投資)が変わるのをチームが見てこそ、チーム内の価値観が変わるのです。風習と投資はチームの未来への鍵だと思っています。」

Q. もしサー・フランク・ウィリアムズが戻ったきたとしたら、現在のチームを認めてくれると思いますか?

「サー・フランクは90年代と2000年代、チームでとてもアクティブに活動されていました。彼は私と似た価値観を持っていたと思います。もちろんパフォーマンス重視でしたが、彼はチームメンバー全員、一人一人の家族、パートナーや子供の名前まで覚えていました。彼はチームメンバーととても近しかったのです。彼の価値観のうちの一つが『私たちはレーシグチームだ。そしてチームとして前進するためだったらどんなことも全て挑戦していく。』といったものでした。彼は2000年初期頃から体調を崩してしまい、チームへの参加も厳しくなってしまいましたが。それがきっかけで彼が作り上げた風習も無くなっていってしまいました。サー・フランクはチームに対して本当にたくさんの素晴らしいことを成し遂げた人物です。」

Q. サー・フランク・ウィリアムズ本人に会ったことはありますか?

「一度だけあります。残念ながら一緒に仕事したことはなく、本当に一瞬だけでしたが。」

Q. どのようにしてメルセデスF1を去り、ウィリアムズの代表に就任したのでしょうか?

「12月に元代表のヨスト・カピート氏がチームを去るというニュースの後、私はウィリアムズの役員たちと話をしました。どちらにせよ、月に一回はウィリアムズの役員たちとエンジンや関係性、マシンの部品などについて話していましたから。数年前、一番最初にウィリアムズとの関係性ができたときに彼ら役員に出会い、私は彼らとメルセデスを繋ぐ橋渡し役を務めていました。話し合いを始めてから、私たちには互いに相乗効果があるということに気づきました。その後4、5回くらい話し合いを繰り返し、契約を結びました。」

「投資の必要性とレガシーのあるこのチームに参加して成功を収めるというのは、人生に一度の機会でした。」

Q. 2014年からエンジンサプライヤーのメルセデスと協力して活動していますが、将来展望はいかがでしょうか?

「確固たるものです。メルセデスは20年以上非常に高品質なエンジンを生産しています。パワーユニットとしては常に一位、二位をキープしていて、それは簡単に達成できることではありません。」

「私にとってメルセデスは、これから10年以上、パートナーシップを続けていきたいエンジンメーカーで、常に評価を続けています。現在、代替になり得るサプライヤーの評価もしているため、2026年からの契約にはまだサインしていませんが、やはりメルセデスが強い候補です。」

Q. ホンダとのパートナーシップについてはどうお考えでしょうか?

「私はBRAホンダにおいて、ホンダとともに働いていました。今でも彼らの連絡先を持っていますよ。ホンダは確固たる組織であり、強力な燃料サプライヤーを必要としているアストンマーティンに参加するというニュースはとても納得のいくものでした。」

「2026年からのレギュレーションにおいて、一番重要と言えるのは燃料です。アラムコ、アストンマーティン、ホンダの関係性は理にかなってると思います。」

「現在、私たちウィリアムズには公式燃料サプライヤーがいません。なので、今後契約を結びたい燃料サプライヤーが現れるかどうかが、ホンダとパートナーシップを結ぶ可能性があるかに大きく関わって来ます。でも今のところ、私たちは契約を結んでいるメルセデスに燃料サプライヤーがついているので、これが安定した選択肢ですね。」

Q. BARホンダで仕事をされていた時、突然ホンダが2008年に撤退、-その1年後に自身はブラウンGPにてチャンピオンシップを獲得されましたが- これに対しどう感じましたか?

「誰しもが驚いていましたよ。2008年に突然、昨日まであったものが、次の日にいきなり終わりを告げられたのですから。ショックでした。雇われていた900人が一晩にして職を失ったのです。私たちは理解に苦しみました。どうしてなのかと。その時既に2009年のマシンが3つウィンドトンネルで開発されていましたし。」

「私たちは全てを犠牲にしました。2007年、2008年の終わりに完了していた仕事はなく、最前線で働いていた私たちが全てを背負っていましたから。突然の撤退はショックであり、理解できませんでした。間違いなくこれは失敗だったと思いますし、彼らがその時のことを振り返れば間違っていたと感じるでしょう。その後、レッドブルにおいてもホンダは優良でした。とても良い仕事をしていたのに、彼らはまたもや撤退しました。」

「結果的にホンダはまた戻ってくるということですが、今回もまた、面白い立場で参加することになりますね。」

「私にとってのホンダの強みは、とても強力な組織だということです。本当に。もし問題があれば、彼らは直ちに解決します。問題を解決するのに必要なリソースも惜しまず使います。」

「特に日本の文化において、多くの失敗がある時に、そのままの道に進むというのは難しいことなのでしょう。ただ、タイミングが時々うまくいかないのです。」

Q. メーカーや投資家に対するウィリアムズの魅力を教えてください。

「とてもシンプルですよ。コンストラクタータイトルを9回も獲得しているチームは数少ないはずです。私の昔いたチーム(メルセデス)ですら8回のみですから。」

「現在、グリッド上位に戻ってくるために進んで投資するメーカーの数はとても少ないです。しかし、ウィリアムズはその少ない内の一つです。アルファタウリはそうではない様子ですね、、、。他のチームは現在苦しんでいますが、ウィリアムズはそうではありません。」

「それに加え、私たちほどのファンベースを持っているチームも数少ないでしょう。現在のグリッド上のポジションはわかっていますが、私たちをサポートしてくれる熱心なファンの数は莫大です。彼らは私たちの成功を祈っているので。ウィリアムズにはブランドに対する強い忠誠心が存在しています。そして、メーカーに対しては、再び優勝を目指していく上での変化や挑戦に望む準備ができているチームであるということが魅力ではないでしょうか。参加の可能性があるメーカーは、その過程に携わることができるということです。ファンベースに加え、これはメーカーにとって胸躍ることですよね。」

Q 現在のマシン、FW45を成功に導くためにはどんなことが必要でしょうか?

「FW45で成功することは正直厳しいと思います。我々がFW45に対してできることは限界に達しています。FW46では大きな変更が導入され、FW47では更なるアップデートを予定しています。この二つのマシンの開発は、技術の限界に挑戦する上で必要不可欠です。」

Q 現在のドライバーについて、サージェントのパフォーマンスはアルボンに比べて良好ではないように見えますが、ご自身の考えを聞かせてください。

「ローガンですね、、、去年の年末、アブダビまでは彼がシートを獲得するかどうかも分かっていませんでした。その時点ではまだF1のマシンでのテストを一度も経験したことがなかったのに、バーレーンでいきなり投入されたんです。」

Q サージェントは典型的なルーキーでしょうか?

「いいえ、典型的ではありません。現在グリッド上にいる他のルーキーたちは、レースを走る前に、1万1000キロにわたるF1のテストを実践済みです。そこが私たちの問題です。ローガンはまだその開発サイクルを学んでいる途中なんです。それに加えて、シーズンの初めに5つのストリートレースがあったということ…… 終わってからカレンダーを見直すまで気づきませんでした。こういった状況下では、リミットや限界線を見つけるのが難しいです。今回のオーストリアと次回のシルバーストンの週末が、彼のジュニアキャリアでの最大限の力の発揮どころだと思います。彼はトラックを知っているでしょうし、慣れるには十分な回数、マシンでの走行もしたと思います。ローガンはチームの強みであるということ、そしてチームのパフォーマンスに良い変化を加える人物であることがこれから分かってくると思います。」

Q アレックス・アルボンはレッドブル・レーシングにいた時、フェルスタッペンにかなりやられてしまいましたが、今は回復してきているのでしょうか?

「私は2016年からアレックスを知っています。彼は少しずつ心を開いてきています。彼と私の関係性は厚く、彼がとても良くやっている時には、そう彼に伝え褒めています。もう少し努力が必要であるという時には、本当のことを伝えるようにしています。徐々に彼が心を開いてきてくれているのがわかります。今ではとてもリラックスしていて、彼が何者なのかということを彼自身がわかっていると思います。そして、パフォーマンスを見せる時には自分がとても高いレベルのパフォーマンスを発揮していると本人もわかっているようです。彼がカナダで成し遂げたことを同じレベルで実現できるドライバーは多くありません。とても困難な状況でしたが、彼はそれでも力を発揮して見せました。」

alex albon canada gp

Q サー・フランク・ウィリアムズに認められるような、優勝できるマシンができるのはいつになるでしょうか?

「もうすぐだ、と言いたいところですね。本当のことを言うとあと数年は必要になるでしょうけど。私たちは必ず戻ってきます。私はこのチームを信じています。」

「ありがとうございました。」

我々シガスポーツはこのインタビューに応じてくれたジェームス・ボウルズに感謝する。

以上が独占インタビューの全容となるが、以下ではモントリオールでのFIA記者会見でのコメントも紹介する。

ジェームス・ボウルズ「20年にわたる投資が現在の我々の地位を築いた。私の前任者はこのような莫大な投資額を持っていなかったので、私は幸運だと言える。ウィリアムズを競争力のあるチームに戻したいという強い情熱がある。それにはもちろん投資が必要で、その額の準備は整っている。みんなが知っているように、約1億4500万ドル(約200億円)のコストキャップがある。それに加えて、あまり知られていないCapEx(資本的支出)バージョンのコストキャップがある。これは少し複雑だが、4年間で約3600万ドル(約50億円)と定められている。だが、もし使いたいのであって、均等に行うのであれば、その6〜7割を毎年使うことが可能である。支出の規制があることはあまり問題ではない。ただ、多くの面で我々が現在所持している予算はほとんど基本的なインフラに使われ消えている。ウィリアムズ内での例を包み隠さず正直に話すとすれば、例えばデザイナーが新しいパーツを発表しても、その全貌は暗闇に消えていってしまう。そしてプロダクションとのEメールのやり取りが始まり、『そのパーツとはどこなのか』『どんなアップグレードであるのか』『どのくらいの大きさなのか』『完成までにどのくらいかかるのか』などを探り出す努力をする。通常は、その情報はトラックできるデジタルシステム上で管理されるため、クルマがどんなパーツで作り上げられているのかを把握することができる。念頭において欲しいのは、一つのマシンには1万7000ものパーツがあるということ。デザイナーたちが1万7000のパーツを作っている間に、全てを把握し続けることは難しい。なので、非効率的な側面がある。これを直すためのソフトウェアは何千万ドルとする。だから、CapEx(資本的支出)は今のところ、もっと基本的なインフラ整備に使っていて、少なくともデザインに対して使うにはどのくらい時間が必要かを算出している。我々が扱っているのは何億ドルという単位だ。これは、現在のウィリアムズが本当の意味での投資にたどり着くために必要な数字だ。このスポーツにおける一番大きな支出額となるかもしれない。これは大きな赤字である。F1、FIA、そして他のチームもこれに対して応援してくれている。我々が現在目指しているのは、他のチームの仕事仲間たちと同等に並べるようなチームのスポーツの公平性とインフラ整備だ。私たちは影で何かを企んでいるのではなく、他のチームと同じように戦っている。」

Q CapEx(資本的支出)の予算増加を望んでいるということ?

「私たちにとっては勿論そうだ。額は少なくない。現在インフラ整備や用地に必要な金額は恐ろしいほどに大きな額だ。会社の用地はコストキャップに含まれないものなので大丈夫だ。例えば、マシン、シミュレーター、ソフトウェア、施設など。私たちが手に入れたいと思っているのは、我々の立ち位置、基準がどこにあるのかを示す力、そしてその基準に達するために必要なだけの投資ができる力だ。」

Q アンドレア(・ステラ:マクラーレンF1チーム代表)、この事に対してどう思う?自身や、マクラーレンはどう考える?ジェームスに同意し、CapEx支出は増やされるべきか?

アンドレア・ステラ「まず最初に、マクラーレンは既に長い間、トップチームと同じレベルのインフラ整備が整った上で運営されているので、ジェームスはまた違った状況下にあると理解している。私たちはだからこそウィンドトンネルやシミュレーター、施設にに投資することができた。このような施設はまだ日の目に浴びていないが、我々はラストスパートをかけているところだ。その意味で、ウィリアムズには同情、この意見への理解ができる。我々はコストキャップを最大限まで使って運営している。CapExの観点で、この制限を少し緩和させる事に関して話し合うのはいつでも歓迎だ。我々も更なる投資がしたいのでね。勿論、複雑な議題ではあるけど、これについて話し合う事には我々は肯定的だ。そして、インフラや資産に関して競争力を得るためにお金を使わなくてはいけない状況下にあるということに対しても理解を示したい。また、これは全てFIAとの兼ね合いもあって起きているという事に対してもね。

オトマー・サフナウアー(アルピーヌF1チーム代表)「そうだね、我々もジェームスを応援するよ。コストキャップが発表される前、その事について話し合っていた。運営のための支出に強い焦点を当てた事に関しては、各チームともにFIAもFOMも良い仕事をしたと思う。僕の記憶が正しければ、その時点でCapExは上限を超える予定で、もっと多くの予算を持った大きなチームたちは、コストキャップに備えてインフラ整備やツールに大量の金額を投じていた。今後それが難しくなることを知っていたからね。その時に資産がなかったチームは同じことができなかった。だから、同じレベルのインフラ整備、そしてF1でのレースに必要な基本的ツールに投資することを許可するのが公平ではないか。これはウィンドトンネルに対して一度行われたことだよね。例えば、アストンマーティンが最新式のトンネルを持っていなかったから、私たちは彼らに免除を与えたりした。だから、F1のレースに必要不可欠な基本的インフラを、全てのチームで同じレベルにするために必要なことはするべきだと思う。

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