【Pirelli Hot Laps】ピレリが提供する至極の走行体験レポート─ラスベガスGPのサーキットを時速250kmで駆け巡る
2025年のF1カレンダーの中でも、ラスベガスGPは特別な存在だ。世界的観光都市の中心部で行われる市街地レースは、きらびやかな夜景とスピードが交差する、非日常空間そのもの。Netflixのドキュメンタリーシリーズ『Formula 1: 栄光のグランプリ』や、映画『F1®/エフワン』が新しい世代のファンを呼び込み、F1人気はかつてない高まりを見せている。ラスベガスGPはF1のエンタメ性を象徴するグランプリのひとつで、今年も会場にはビヨンセやジェイ・Z、トラヴィス・スコット、ベン・アフレックといったVIPゲストが姿を見せ、華やかさに拍車をかけた。そんな熱狂の中、F1のタイヤサプライヤーであるピレリが提供する「Hot Laps」を取材する貴重な機会が訪れた。
今回使用されたのは、V8エンジンを搭載した Ford Mustang® Dark Horse(以下ダークホース)。500馬力を誇るこのマシンは、市街地コースでも“本気の速度域”に到達できるポテンシャルを持つ。コースの特性や速度変化、そして市街地ならではの路面の粗さまで、そのすべてを助手席から肌で感じ取れる、貴重な体験となった。
走行前のブリーフィングでは、ピレリスタッフから安全上の注意説明を受けた後、この日のドライバーが紹介された。 ヘルメットのフィッティングを済ませ、スタッフに導かれてグリッドへ向かう。
ネオンの光と時速250kmのスピード―唯一無二の走行体験
ダークホースの助手席に乗り込むと、担当ドライバーが気さくに声をかけてきた。「やあ、僕はフランキーだ。よろしくね」と握手をしたそのドライバーは、『マルコム in the Middle』の主役で知られる俳優のフランキー・ムニッズだった。子役としての印象が強いムニッズだが、現在40歳の彼はNASCARで出走する現役レーシングドライバーだ。
彼がアクセルを踏むと同時に、V8エンジンは低音で唸り、その振動は胸の奥まで響き渡った。一気に加速するダークホースに悲鳴をあげた筆者に対し、「今まで経験した一番速い車の速度はどのくらい?」となだめるように質問してきたムニッズ。鳴り響くエンジン音の中、やっとの思いで「全く見当もつかないよ」と答えると、ムニッズは「大丈夫、少しゆっくりいこう」と冗談めかしながら、あえて強めの急ブレーキをかけた。この瞬間、筆者の体はシートベルトに保持されながらもわずかに浮き、サーキットでの縦方向のGを全身で体感した。
「これからラスベガス・ストリップに入るよ。準備はいい?」。ストリップの直線区間に入ると、加速感が一段と増した。シフトアップごとに身体がシートへ押し付けられる。視界左右の街並みと眩しいネオンが急速に流れ、計器の数値は約250km/hを指した。そこからターン14へ向けて、強烈な減速が始まる。路面のつなぎ目やバンプを拾いながらも、ピレリのスリックタイヤは安定性が高い。コーナーでのグリップ性も高く、ダウンフォースを全身に感じながらターンをする。このコーナーで受けるGは別次元で、背中だけでなく頭部や腹部にも強く圧力が伝わる。

景色の華やかさとは裏腹の過酷なコース
コースを走る中で印象的だったのは、レース中継では伝わりにくい“路面の粗さと街路区間の凹凸”だ。市街地であるラスベガスのサーキットは、グランプリ開催期間中でも時間帯によって一般道として開放される。もちろん点検や整備はされているものの、バンピーな路面も所々で感じられた。特にターン12〜14にかけては、減速と再加速のリズムが独特で、ラインを外すと車体が跳ねる要素も残っている。
コース幅が広く見えるストリップも、実際に走行すると街灯・観客席・ガードレールなどの壁が視界に入り、速度感覚を狂わせる。
もちろん、フォーミュラカーとスポーツクーペではマシンの多くの機能が異なるものの、体験走行により“F1ドライバーがどの環境下で戦っているか”を、より鮮明に理解することができる。

スポーツ × エンタメ × ライフスタイル
さらに決勝日には、 ルイス・ハミルトンが「Pirelli Hot Laps」の特別ドライバーを務め、ビヨンセ、ジェイ・Z、トラヴィス・スコットらが同乗した様子が各国メディアで取り上げられた。
これは、ラスベガスのエンターテインメント性とF1の世界的影響力が結びついた象徴的なシーンであり、「Hot Laps」という体験がモータースポーツとポップカルチャー、そしてラグジュアリーなライフスタイルを体現する存在であることを感じさせる。
体験を通じて見えた、F1の“速度の本質”
「Hot Laps」は短時間の体験だが、加速・減速のG、路面の情報量、街路灯をかすめる速度感など、F1の根底にある“物理的な世界”を直接身体で理解できる。 特に250km/hからの急減速は、観戦では決して味わえない領域だ。
「Pirelli Hot Laps」は、F1を“見るスポーツ”から“体感するスポーツ”へと広げる試みとして、年々注目度を高めている。その魅力は、モータースポーツファンはもちろん、誰もが一度は体験する価値のある唯一無二のプログラムだ。今回、ラスベガスGPという象徴的な舞台でその走行を味わえたことは、“F1がなぜ世界的なスポーツとして支持され続けるのか”を改めて実感する機会となった。
- 写真:Shiga Sports Japan
- 写真:Shiga Sports Japan
取材・文:山口 京香 Kai Yamaguchi
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