【イギリスGP】角田裕毅、悔しい完走最下位―旧型仕様と戦略ミスに泣く

2025年のF1イギリスGPは、レッドブル・レーシングの角田裕毅にとって転機となることが期待されていた。しかし7月6日(日)の決勝で角田は、完走者の中で最下位という結果に終わった。2025年シーズンを通じて、角田自身とチームが直面している困難を、改めて浮き彫りにする内容となった。
特にペース面での苦戦は深刻だった。スピンで一時10位まで順位を落としたマックス・フェルスタッペンに対して、角田は1周あたり最大で4秒も遅れ、その差は衝撃的だった。週末を通してわずかな進歩もあったが、注意深く見なければ気づかないほどだった。
角田裕毅は、意気込みを持ってシルバーストン入りしていた。7月3日(木)にはオーストリアGPでのミスを素直に認め、「自分に問題があった」と語った。「オーバーテイクの場面では、もう1周待つこともできたのに、押し切ろうとしてしまった。あの状況で全開で行く必要はなかった」
これは角田にとって珍しいほど率直な自己批判だった。しかし同時に、24歳の彼が成長を見せている証拠でもあった。
7月4日(金):FP2で手応え、マルコも評価
金曜日のフリー走行1回目(FP1)では、英国のジュニアドライバー、アービッド・リンドブラッドが角田のマシンに乗った。角田はFP2でマシンに戻り、すぐにペースを上げていった。フェルスタッペンとの差は依然大きかったが、クリーンで有意義なセッションとなった。レッドブルのヘルムート・マルコ氏も称賛し、「ようやく改善が見えた」とコメントした。
角田は、フェルスタッペンとは異なる旧仕様のアンダーフロアを使用していた。しかし、レッドブルのテクニカルディレクターであるピエール・ワシェは、「スパ(ベルギーGP)までには同仕様にアップグレードされる」と明言している。
7月5日(土):セットアップ変更と予期せぬトラブル
土曜日、練習走行で手応えを得たチームは、フェルスタッペンと同じ低ダウンフォース仕様のリアウィングへと変更。これは、アンダーステアの軽減とストレートスピードの改善を狙った選択だった。この変更は一見すると効果的に見えた。角田はFP3で適応を見せ、自信を持って予選に臨んだ。
しかし、Q2でトラブルが発生。フライングラップの開始時にパワーユニットに問題が発生し、第1セクターでパワーを失い、スピードが伸びなかった。「パワーロスがありました。問題がなければQ3は十分狙えたと思います」と角田は語った。
最終的に12位となったが、前方グリッドのペナルティにより11位スタートとなった。ホンダの三部敏宏社長を含む関係者が現地入りしていた中で、これは痛い機会損失だった。
それでも、ワシェとマルコの両者は彼のパフォーマンスに前向きな評価を示した。「ユキは今日よくやった」とワシェは語っている。「FP2とFP3の間にダウンフォースレベルを変更したが、その新しい仕様にもすぐに順応していた」マルコも「いい方向に進んでいる」とコメントしている。
7月6日(日):戦略ミスと厳しい現実
土曜日の手応えとは対照的に、日曜日のレースは厳しい展開となった。予報では雨が予想されていたにもかかわらず、レッドブルはドライコンディションに合わせたセットアップを選択。クリスチャン・ホーナーは「チームは本格的な雨は来ないと予測していた」と後に語っている。
しかし、週末を通して断続的に降っていた雨の中でこの判断は疑問視されるものとなった。低ダウンフォース仕様は、雨が降り始めたレース序盤でフェルスペッタン、角田の両者を苦しめた。
フェルスタッペンはバーチャルセーフティカー再開後にスピンしながらも、5位まで巻き返した。しかし、角田は挽回するほどのスピードを出すことができなかった。旧スペックのアンダーフロアを使っていた彼は、タイヤの劣化に悩まされた。
「今日の問題は、雨とそのコンディションでした。また、いつものように大幅なタイヤのデグラデーション(劣化)がありました」と角田は語った。
「雨の中でも自信はありましたが、なぜペースが上がらなかったのかは分析が必要です。ダウンフォースの影響もあるかもしれませんが、それだけが原因ではないと思います。まだ本来の速さには届いていません」
角田は15位でフィニッシュ。完走者中最下位という悔しい結果に終わったが、すべてが彼自身のせいというわけではなかった。シュピールベルクのようなクラッシュや過剰なアグレッシブさはなく、マシンをしっかりコース上に保った点は評価された。
角田はこの週末も「テストドライバー」のような役回りを強いられた。データ収集を行い、マシンにダメージを与えないことが優先されたかのようだった。
「角田は難しいコンディション下で、無傷で完走しました。あの不安定なRB21でそれを成し遂げたのは、立派なことです」とパドックの関係者の1人は、レース後にそう話した。
今後の展望:スパに向けた希望
努力の成果として、角田はスパでようやく最新のアップグレードパッケージを受け取る見通しだ。これが2025年シーズンで初めて、フェルスタッペンと同仕様のマシンを得ることを意味する。
「ベルギーでは、マシンが違うはずです」と角田は語った。「それまでの休暇期間中に精一杯、準備を進めます」
ただし、ハードウェアの変更だけでレッドブルの問題がすべて解決するわけではない。現在のRB21はウェットでもドライでもタイヤ劣化が深刻で、グリッドの中でも最悪レベルと言われている。フェルスタッペンがポールポジションを狙って採用した、低ダウンフォースセットアップは、コンディションが変化すると途端に裏目に出る傾向がある。
また、レッドブルはすでに開発の主軸を2026年に向けているようだ。チーム代表のホーナーも、2025年は小規模なアップデートにとどまる見込みだと明かしている。
それでも、角田の進む道は明確だ。与えられたマシンの性能を最大限に引き出し、一貫性を示すことだ。フェルスタッペンに近づくことが不可欠である。もしシーズン後半に安定してポイントを重ねられれば、上位から下位まで、他チームからも注目される存在になるだろう。
シルバーストンでは悔しい結果に終わった。しかし、スパでは――より高速で流れるような、そして再び雨に見舞われる可能性のある――新たなチャレンジが待っている。
そこで、ついにブレークスルーの瞬間が訪れるかもしれない
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