角田裕毅レース日誌:イタリアGP

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グリッド降格ペナルティ、またも叱責、最下位からスタートし、イタリアGPで14位でフィニッシュした角田裕毅の週末は、厳しいスタートであった。契約更新のタイムリミットが迫る中、角田裕毅の来シーズンについての批判は各方面から高まっており、角田のプレッシャーの大きさがレースパフォーマンスとインタビューからも感じ取れる。

木曜日:

木曜日メディアインタビューに答える角田裕毅

メディアデーである木曜日、ドライバーにとっては、各国メディアと談笑し、リラックス出来る場であり、控えるレースへのモチベーションを上げる1日となるはずであるが、角田裕毅には大きなプレッシャーが襲っていた。そのプレッシャーは、我々からも見てとれるほどであった。

来シーズンのアルファタウリとの契約継続が未だ発表されておらず、更に前週のオランダGPでのグリット降格ペナルティ、シートベルトを締めないままトラックを走行したことで今シーズン5回目の懲戒処分を受けているからだ。

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角田自身は「馬鹿げたミス」を最小限にする努力をする傍ら、そんなミスからも多くを学んでいる、と語っている。

また、オランダGPでマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)を有利にしたという陰謀説に対しては、「こんな噂を広める人々は、MRIスキャンが必要だ」と皮肉たっぷりに応戦した。角田にとってはなんとも不愉快な木曜日になった。

金曜日:

FP2でイエローフラッグを無視して更なるペナルティ

翌日金曜日も状況は好転せず、FP2でイエローフラッグを無視したことで既存の10グリッド降格ペナルティに3グリッド追加された。

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アルファタウリのチーム代表フランツ・トストは、「彼は自分の感情をコントロールする必要があり、FP2でイエローフラッグを無視することは賢いことではない。彼はもっと規律を持たなければならない」と不満げに語った。

角田にはペナルティ2点と、グリッド降格ペナルティが3点与えられ、累計ペナルティは8点となった。そのうちの 2点は11月14日に失効する。

イエローフラッグを無視した角田を叱ったフランツ・トスト

12ヶ月で累計ペナルティ12点となったドライバーには、1レースの出場停止処分が下る。

角田は、自分の「馬鹿げた」ミスを減らす必要があることを認識しており、「もちろん私は愚かな行動をできるだけ少なくしようとしますが、何か行動を起こしてクラッシュした場合はそこから学びます。しかし、イエローフラッグを無視しスピードを出すなど、不必要なことを何度かしました。これ以上ペナルティポイントを増やしてはいけない。」と語る。

角田は、フラッグを無視したのは「誤解」であったという主張を繰り返している。「エンジニアとのラジオメッセージの中で誤解が生まれた。イエローフラッグでのスピード違反でペナルティを取った事はこれまで1度も無く、通常ならスピードを落とします。今回は誤解が生じたので、速度を落とさなかったのです。」と主張している。

一方で「今回のミスも自分の責任であり、特にイエローフラッグでは、安全のために速度を落とさなければなりません。今回学ぶことができた。」とも認めている。

土曜日:

決勝でやれることはすべてチャレンジするが
多くは期待できないと語った角田裕毅

角田にとっては簡単な予選となった。多くのグリッドペナルティにより最下位からのスタートを予測していた彼は、Q3に到達するのに十分な競争力のあるラップタイムで、Q1では最低限のパフォーマンスでフィニッシュ。 しかし、タイヤの節約のため、Q2ではラップを走行しなかった。この日のインタビューで、翌日日曜日のレースへの抱負を聞かれた角田は、「できる限りチャレンジするが、20番手からのスタートなのであまり期待していない。」と語った。

日曜日:

ハードタイヤに苦しみP14でチェッカーを受けた

予想通り、この日もあまり期待が持てないレースであった。角田は14番手でフィニッシュ。 ミディアムタイヤは快調であったが、ハードタイヤに苦戦。 彼のレース戦略は期待どおりには機能せず、ポイントのチャンスには恵まれなかった。一方、アルファタウリのチームメイト、ピエール・ガスリーは8位入賞を果たし、自身とチームにとって重要なポイントを獲得することが出来た。

イタリアGP総論

角田は今、他のどのドライバーよりも多くのペナルティポイントを持っており、これ以上のペナルティが加算されると1レース出場停止処分の可能性もある。

もちろん今年のAT03(AlphaTauri Car 2023)は結果を出すのに苦労しており、角田はまだ本領を発揮しきれていない。角田のキャリアにおいて、今年ほど重要な年はないだろう。

角田にプレッシャーがかかる

そしてもちろん、AT03のマシンはグリップ、バランス、スピードにおいて苦戦しており、角田に言わせると「すべてがめちゃくちゃ」である。しかし、角田は、ピエール・ガスリーがそうしているようにレースエンジニアに建設的なフィードバックを行いマシンの向上に努めきれていない。

レッドブルの重鎮ヘルムート・マルコは、角田のチームラジオの内容について「罵り言葉でマシンは向上しない」と、しばしば批判的な意見を寄せる。

角田自身は、問題を解決することの大部分は現状ガスリーの肩にかかっていることを認めており「(ガスリーは)チームが苦戦しているときでも、常に質の高いフィードバックを提供する。」と語っている。

ガスリーがアルファタウリを離れてアルピーヌに移籍した場合、角田はガスリーの持つスキルと経験に勝ることは難しいだろう。これは、2023年のアルファタウリにとって大きな心配要素となる可能性がある。

親切でフレンドリーな性格の角田は、パドック関係者やメディアの間で人気が高いが、同時に多くの人が彼のF1キャリアは崖っぷちであるとも認識しているのも事実で、今シーズンで彼のF1キャリアが終わる可能性も噂されている。

レッドブルは、スクーデリア・アルファタウリのオーナーであり、強気なドライバーチョイスをすることで有名でもある。ドライバーに満足がいかない場合、同時に複数のドライバーを入れ替えすることさえある。結局のところ、アルファタウリはレッドブル・レーシングチームのジュニアチームとして、シニアチームであるレッドブルのドライバーをトレーニングする位置付けなのだ。

レッドブルの重鎮ヘルムート・マルコは
角田の悪いチームラジオを叱った

何度も書いてきたように、オランダGPとイタリアGPは、角田の残留のためレッドブルの意思決定者にアピール出来る最大の機会であった。しかし、この2つのレースで角田は彼らを失望させてしまったという他ない。

角田が既に諦めモードになっているのか、最後のチャンスを掴めるのか、次のシンガポールGPでの結果に掛かっている。

シンガポールGPは、デコボコのトラック路面と高温多湿の過酷な気候でF1シーズンの中で最も過酷なレースと言われる。市街地サーキットのため、ミスの余地がないのも精神的に堪えるナイトレースである。

身体的、精神的に過酷な環境下でのレースは、最高の集中力とモチベーションを要する。角田がシンガポールGPで再び残念な結果になった場合、彼のF1人生が幕を閉じてしまうのではいか、と大変心配である。

水分を良く摂るのがシンガポールGPでは大切だろう
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