カタール航空、F1におけるマーケティング成功のわけとは

近年、国自体やその中心地・観光地に対する広告促進の機会となるフォーミュラ1は、航空会社にとってのマーケティング激戦区となっていた。今のところ、その勝者に輝いたのはカタール航空と言えるだろう。

長年の間、多くの航空会社はF1でのマーケティングを避けてきた。F1のレースで度々起きるクラッシュと企業のイメージを関連づけされたくなかったのが理由である。

F1が非常に有効的なマーケティング方法であると気づきはじめた航空会社は次々にグランプリのスポンサーへと名乗り出た。ガルフ航空、シンガポール航空、カナダ航空、カンタス航空などはその国で開催されるグランプリのスポンサーを務め、元々スパイカー、フェラーリとの関係があったエティハド航空は、シーズン最終地点であるアブダビGPで毎年メインスポンサーを務めることとなった。

Qatar Airways, CEO Akbar Al Baker
Qatar Airways, CEO Akbar Al Baker

エミレーツ航空もこのブランディングの機会を認識していた。マクラーレンF1のスポンサーを務めた後、2013年にF1の公式パートナーとなり、その2022年まで契約が更新されるなど、業界最大の航空会社に上りつめた。

このエミレーツ航空のF1とのビジネスケースは、有効的なブランディングの見本として現代におけるマーケティングの教科書に載るだろう。9年間のF1での広告促進はエミレーツ航空の成長だけでなく、国際的中心地としてのドバイの認知も広めた。これは、Netflixで配信されているF1ドキュメンタリー『Drive to Survive』によるF1の国際的成長と人気上昇に後押しされたものであることは間違いないだろう。

2022年の契約終結を最後にF1とのパートナーシップに終止符を打ったエミレーツ航空。これはF1の人気上昇によるスポンサーシップの価格向上が原因であろう。エミレーツ航空の公式声明では「我々は既にF1でのブランディング目標に到達していて、他のエリアでのブランディングに焦点を当てるため」とされている。

ここで一躍注目を集め始めたのがカタール航空だ。カタール航空はもちろんこれまでもスポーツ業界でのマーケティングは行っていた。2022年にカタールでサッカーW杯が開かれたことにより、スポーツ界においてカタール航空は世界に対し国を新興させる航空会社となっていった。パリ・サンジェルマンやバイエルン・ミュンヘンのメインスポンサーを務めているのが良い例である。

エミレーツ航空が契約の更新を行わなかった時、国家としてのカタールとカタール航空はこれを唯一無二の機会だと考え、競争的なF1へのオファーを提示した。

タイミングは偶然ではなく、このシーズンはカタールGPの開催10年契約の開始の年でもあった。

忘れてはいけないのは、新型コロナウイルスのパンデミック禍において、ヨーロッパでキャンセルされたグランプリの代替を担うことをルサイル・サーキットが名乗り出たことで、カタールは初めてF1のグランプリを開催したということだ。F1のマネジメントとFIAは、コロナ禍においてF1開催を続けることに協力してくれたカタールに対し、非常に感謝をしているようだ。

カタールは、2022年FIFAワールドカップ後、国際スポーツイベントを開催する国としての認知を保つという面でF1は完璧なマーケットであると考えていて、そのプロセスに国家の航空でありグローバルシンボルであるカタール航空が関与するというのは必然的なものであった。

エミレーツ航空の撤退によってカタール航空は2027年までのF1公式航空パートナーの契約を結び、カタールGPの開催スポンサーという立場以上の関係を築いた。

ドーハで開催されるカタールGPではありとあらゆるところにカタール航空のロゴを見ることができる。グランプリ開催中は、VIPゲストを接待するキャビンアテンダントがブランドのシンボルとして見受けられる。カタールとカタール航空を世界に代用する上で完璧なケースだと言えるだろう。

日本でも、カタール航空はビジネスを拡大している。大阪便を開始したのに加え、パンデミック後、毎日運航する羽田便を再開した。

カタール航空のF1を通してのマーケティングはFIFAやUEFA、パリ・サンジェルマンなどと多くのスポーツ団体とスポンサーシップを結ぶ中でも一段と大きいものである。そしてカタールGP10年間の開催契約により、これからもカタール航空はより多くの人に空の旅を届けることとなるだろう。

【カタールGP】FIA、体調不良者続出を受け、今後のグランプリ開催について声明を発表

【カタールGP】波乱のタイヤ安全性問題とその対策案

Similar Posts