ヴォルフ氏、メルセデス株式売却交渉中―チーム評価額は史上最高57億ドルに
メルセデスのチーム代表であるトト・ヴォルフ氏が、保有株式の一部売却に向けて交渉を進めている。今回の取引により、8度の世界チャンピオンに輝いたチームの評価額は、史上最高となる57億ドルに達する見込みだ。
ヴォルフ氏はチームの3分の1の株式を保有しているが、そのうち約5%の売却を検討しているとみられる。なお、チーム代表兼CEOとしての役割は引き続き務める予定だ。
この報道は、『ザ・ハリウッド・リポーター・ジャパン』を含むペンスケ・メディアの刊行物である『スポルティコ』が最初に伝えたもので、マクラーレンの株主構成再編によって同チームの評価額が44億ドルとされたわずか数週間後に明らかになった。これは、F1チームの評価額が高騰する新たな時代の到来を示している。
メルセデスの広報担当者は直接的なコメントを避け、次のように述べた。「この件についてコメントすることはない。チームのガバナンスは変更されず、3者のパートナー全員がメルセデス・ベンツのF1における継続的な成功に完全にコミットしている」
F1史上最高の評価額
メルセデスチームは、ヴォルフ氏、メルセデス・ベンツ、化学複合企業イネオスの3者で共同所有されており、それぞれが3分の1の株式を保有している。イネオスが2022年に2億6000万ドルで株式を取得した際、チームの評価額は約7億8000万ドルとされていた。今回の売却提案は、わずか3年間で評価額が7倍に増加したことを意味し、リバティメディア体制下でのF1の商業的成長を反映している。
かつては情熱的なプロジェクトや赤字を抱えるメーカーの派生事業として運営されていたF1チームは、現在では非常に価値の高いグローバルスポーツフランチャイズへと変貌を遂げた。予算上限の導入、国際的な視聴者数の急増、新世代ファンの獲得が、この再評価の背景にある。

「ドライブ・トゥ・サバイブ」効果
F1人気の復活を後押しした大きな要因が、2019年にNetflixで配信が始まった『ドライブ・トゥ・サバイブ』だ。このシリーズは、ドライバーの人間性やコース内外でのライバル関係をドラマチックに描き、世界中で新たな視聴者を獲得した。特にアメリカでは、F1が長年浸透に苦戦していたにもかかわらず、注目度を急上昇させた。
結果として、オースティン、マイアミ、ラスベガスで開催されるアメリカGPの観客数は急増し、これらのイベントは主要なエンターテインメントショーへと変貌した。新規ファンの流入、特に若くソーシャルメディアに精通した層の獲得は、F1をデジタルエンゲージメントとイベント収益の両面で、世界で最も急成長しているスポーツへと押し上げた。
F1ビジネスの新時代
予算上限とリバティメディアのガバナンス改革以前、F1チームの多くは脆弱な財政基盤で運営されていた。予算は事実上無制限であり、メーカー間の支出競争がチャンピオンシップを左右していた。現在は、予算上限の導入、商業的分配の強化、スポンサー需要の急増により、F1は持続可能で高収益のスポーツビジネスへと変化している。
かつて1億~2億ドルで売却されていたミッドフィールドのチームは、現在では定期的に10億ドルを超える評価を受けている。さらに、国際自動車連盟(FIA)は新規参入による既存チームの収益減少を補償する「希薄化防止料」を導入しており、その額は当初の2億ドルから今後さらに上昇する可能性が高い。

文化的勢いとハリウッドの影響
F1の台頭は、ハリウッドの関心の波とも重なっている。昨夏公開されたブラッド・ピット主演の映画『F1®/エフワン』は、世界中で6億3000万ドル以上の興行収入を記録した。スポーツ映画として最大の成功を収め、ブラッド・ピットのキャリアの中でも最もヒットした作品となった。
この映画の成功は、F1のポップカルチャーにおける関連性の高まりと相まって、スポンサーや放送局、投資家にとってのスポーツ価値をさらに押し上げている。
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