レッドブルが大規模チーム再編 ヘルムート・マルコ氏が実務から退任へ
2025年シーズン最終戦アブダビGPの余韻が残る中、レッドブル・レーシングで長年にわたり絶大な影響力を持ってきたヘルムート・マルコ氏(82)が、チームの実務から退く見通しであることが明らかになった。複数のレッドブル内部関係者が『Shiga Sports』に認めたもので、オランダ紙『デ・テレグラフ』のエリック・ファン・ハーレン記者の報道もこのニュースを裏付けるものとなる。正式な発表は早ければ火曜日にも行われる見通しだ。
マルコ氏は2005年の参戦開始以来、レッドブルのドライバー育成体系を構築し、セバスチャン・ベッテルの4連覇、マックス・フェルスタッペンの台頭など、チームの黄金期を支えてきた中心人物。その20年に及ぶ影響力の大きさから、今回の動きはチーム再編の象徴的節目と受け止められている。
生放送インタビューで決定的に

変化の兆しが決定的になったのは、アブダビGP決勝後に行われた英『Sky Sports』の生中継インタビュー。フェルスタッペンが優勝し、ランド・ノリスが初タイトルを獲得した直後、マルコ氏は自身の進退について問われ、こう答えた。
「疑っているわけではない。話し合いをして、その後どうするか決める。複雑な問題なので、一晩寝て考える」
この数時間後、レッドブル内部ではすでにマルコ氏が実務から退き、2026年に向けて新たな体制へ移行する方向で協議が進んでいることが共有されていた。
権力構造の変化と内部対立
今回の決断の背景には、今年前半のクリスチャン・ホーナー氏解任以降、レッドブルグループ内で続いてきた権力構造の変化があるとされる。マルコ氏はホーナー氏退任を後押しする中心人物だったが、それによってかえって組織改革が加速し、決定権がミルトンキーンズではなくザルツブルク本社側に移り始めた。
オリバー・ミンツラフCEOの権限は、マテシッツ家とタイ側株主の支持を得て強化される一方で、マルコ氏の独立した権力基盤は次第に弱まったという。
内部関係者によれば、以下の点がマルコ氏の影響力を揺るがす要因になったとされる。
・ミンツラフCEOとの戦略・運営面での度重なる意見対立
・レッドブル公式方針や広報プロトコルに反する発言の増加
・カタールGPでのキミ・アントネッリへの批判が1,000件を超える誹謗メッセージの発生につながったことが“最後の引き金”となった
メキース代表は直接言及避けるも「組織改革」を強調

ローラン・メキース代表はマルコ氏の退任に直接触れることは避けたが、チームが変革の途上にあることを強調した。
「ヘルムートは今季の復調に非常に協力的だった。F1は静的な環境ではなく、組織を常に見直す必要がある」
「特定の誰かについて述べているわけではないが、彼が中盤以降の改善に果たした役割には感謝している」
名誉を保った退任、コンサルタントとして関与継続へ
マルコ氏はF1の現場業務から退き、故郷グラーツでのホテル事業に注力するとみられる。ただしレッドブルとは引き続きコンサルタント契約を結び、フランツ・トスト前代表と同様に給与と本社オフィスが維持される見通しだ。
角田裕毅のキャリアにも影を落とした20年
マルコ氏の遺産は輝かしい成功とともに、角田のF1キャリアにも重く残る影響を与えた。
同氏は角田の最も厳しい内部評価者として知られ、
・2025年のレッドブル昇格案を退け、リアム・ローソンを支持
・翌年のレースシート喪失につながる決定を後押しし、アイザック・ハジャーの抜擢を支持
・角田のレーシングブルズ復帰案にも反対し、ローソンとアービッド・リンドブラッドを優先
といった判断がキャリアの方向性に直接的な影響を与えた。
特にリンドブラッドのF1昇格はF3・F2でタイトルを持たない異例の抜擢であり、マルコ氏最終期の最も議論を呼ぶ判断のひとつとなった。
しかし、角田裕毅のF1昇格を加速させたのもヘルムート・マルコであり、そして彼をフランツ・トストの指導に委ねたのもマルコだった。
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