レッドブルとホンダ、成功の10年に幕 2026年に向け双方が新たな道へ
アブダビで行われた最終戦をもって、レッドブルとホンダの長年にわたるパートナーシップが正式に終了した。ハイブリッド時代を代表する最強パートナーシップのひとつが幕を下ろし、2026年の新レギュレーションに向け、双方はそれぞれ新たな方向へ舵を切る。
ホンダの撤退は、レッドブルがフォードと提携して独自のパワーユニット開発へ移行するタイミングと重なる。両陣営の首脳陣はアブダビでの締めくくりに際し、この8年間の協力関係を「驚異的な成功物語」と振り返った。
マルコ氏「ホンダ撤退決断で自社PU開発は避けられなかった」

レッドブルのヘルムート・マルコ氏は、ホンダが2020年にF1撤退を決断したことで、チームは独自のパワートレイン部門を立ち上げるしかなかったと説明した。
「レッドブルが自分たちのエンジンを作るという新しい道だ」とマルコ氏。「ホンダがやめると言った時、我々にはそうするしかなかった。一年後に彼らは撤退を撤回したが、もう遅かった。すでに投資を始めていたし、当時の我々の内燃エンジンは稼働していた」
この決断が、レッドブル・パワートレインズ設立の転機となり、双方の提携継続が構造的に難しくなったことが示唆された。
ホンダが公式声明で別れ「多くの勝利とタイトルに貢献でき誇り」

アブダビGP後、ホンダは公式声明を発表し、8年間にわたるレッドブルおよび姉妹チームとの協力関係に感謝を述べた。
ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長は次のように語った。
「レッドブル・パワートレインズおよび両チームとの強力な協力関係を通じ、8年間にわたりF1の最前線で戦い続けられたことを誇りに思う。ホンダの技術と人材が数多くの勝利とチャンピオンシップに貢献できたことを嬉しく思う。関係者の皆様に心より感謝申し上げます」
そして2026年からアストンマーティンと組む新たな計画に向け、「この経験を活かし、モータースポーツ活動と技術開発をさらに進めていく」と語った。
メキース代表「素晴らしい関係は終わるが、敬意は変わらない。来年はライバルに」

レッドブルのチーム代表ローラン・メキース氏は、ホンダとの別れについて「感情的であり、避けられないもの」と述べた。
「近年で最も成功したパートナーシップの1つが終わりを迎える」と語り、こう続けた。
「数字以上に、非常に密接で強固な関係があった。そして今夜で終わり、来年からはライバルになる」
ただし、競争関係に変わっても敬意と友情は続くと強調した。
「来年は“磨かれたライバル”になるが、これまで築いた関係は変わらない。場合によっては、将来ホンダエンジンを積むマシンを再び走らせることになるかもしれない。その時は懐かしい顔ぶれと会えるでしょう」
8年間でF1勢力図を変えたパートナーシップ

ホンダとレッドブルは共に複数のタイトルを獲得し、2021年にはフェルスタッペンの初戴冠を果たした。公式撤退後も技術支援は継続し、2025年までレッドブル車両にはホンダ製PUが搭載された。
2026年からホンダはアストンマーティンと組み、レッドブルは初の独自エンジンで参戦する。かつての盟友は今後、直接のライバルとしてしのぎを削ることになる。
また、FIAの「TPC(Testing of Previous Cars)」規定に基づく取り決めにより、ホンダは引き続きレッドブルのTPC活動に技術支援を提供する。これにより、アービッド・リンドブラッドや新リザーブドライバーなど、若手育成のためのホンダPU搭載車両の使用は2026年まで保証される。
成功と複雑な経緯を併せ持つ8年間の協力関係は終わりを迎えたが、その技術的影響は、両陣営が新時代へ踏み出した後もF1の中に残り続けることになる。
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