小松代表、ハース再建の現状語る「トヨタ提携は競争力強化が目的」
アブダビでのシーズン最終戦を前に、ハースの小松礼雄代表が、トヨタとのパートナーシップの拡大、新たな技術体制、そして長らく導入が待たれていた新シミュレーターについて、これまでで最も踏み込んだ説明を行った。小松氏は先週、日本で豊田章男会長らトヨタ幹部と会談し、木曜日に公開された公式写真にも参加している。
トヨタとの協力は「ブランド目的ではない」
2026年からトヨタがハースのタイトルパートナーになることが発表されると、F1界では将来的なワークス化の憶測も飛び交った。しかし、小松氏はその見方を即座に否定した。
今回の契約は「突然の方向転換ではなく、これまで続けてきた取り組みの延長線上にある」と強調。

「スポンサー予算が増えること以外で大きく変わるのは、パートナーシップがより構造的になる点だ」と説明し、来季は過去車テスト(TPC)プログラムを拡大し、2024年に導入した取り組みを「さらに発展させた形にする」と明かした。
「ブランド目的ではない。狙いはチームをより競争力のある状態にすることだ」と語り、さらに一部で語られるトヨタのエンジン供給や将来的なワークス化の憶測を一蹴。
「“トヨタがエンジンを作る”と言うのは簡単だが、我々の間では協力の目的は完全に明確だ」と述べ、今回の提携が“人材育成”を軸とした長期的プロジェクトであることを繰り返し示した。
緊急課題だった新シミュレーター、来春稼働へ
今年、小松氏が「緊急に必要」と語っていた新シミュレーターは、来年5〜6月頃に稼働予定だという。
「概念実証用のプラットフォームはすでに動いているので、稼働後はすぐに実戦投入できる」と説明。フェラーリのマラネロ施設を借りている現在の状況については、技術スタッフの多くが英国にいることから「効率が悪く、利用日程も限られていてロジ面でも難しい」と課題を挙げた。
2026年に控えるレギュレーション大変革を前に、「シミュレーターの重要性はさらに増す」と述べている。
2025年を総括
小松氏は、今季の評価について率直だった。
「シーズン序盤は本当にひどかった」と認めつつ、「そこから巻き返せたことは心から誇りに思う」と語る。
最終的なポイント数についても、「73ポイントにとどまるべきではなかった。多くのポイントを取り逃した結果が現在の位置だ」と分析し、数字が実力を完全には反映していないとの見方を示した。
それでも、“開発ができないチーム”というハースへの従来の評価は払拭できた、と自信をのぞかせる。
「これで2年連続で、シーズンを通して開発を進められるチームだと証明できた。以前の評価はもう終わりだ」
380人体制の“最小チーム”で進める再構築
今年は、サーキット側のエンジニアリング体制も刷新した。
「痛みが出るのはわかっていたが、どこかでやらなければならなかった」と述べ、現在のスタッフ数が約380名と、グリッドで最も小規模であることを強調した。
「重要なのは、彼らがより良い仕事をできる環境を整えることだ」
技術協力とケルン施設利用は“必要な場合のみ”

トヨタとの協力にはケルンの一部施設利用も含まれるが、小松氏は「使うこと自体が目的ではない」と念を押す。
「彼らには素晴らしい施設と人材がある。特定プロジェクトに有益な場合は使用するが、“あるから使う”ではない」
また、これまで外部で製作していた一部コンポーネントについて、より内製に近い扱いへ移行したという。
フェラーリとの技術協力は「存在の基盤」
小松氏は、トヨタとの協力が拡大してもフェラーリとの技術提携は揺るがないと明言する。
「ハースの存在はフェラーリとの協力なくして成り立たなかった。今回のプロセスも、フェラーリに“完全に透明化”しながら進めてきた」
そして、「トヨタがフェラーリの役割を奪うわけではない。技術協力の中身は明確で、何も問題はない」と説明。
また、トヨタ側もフェラーリが今回の提携に同意していることを確認した上で契約を進めた、と明かした。
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