【シガスポーツ独占インタビュー!】マクラーレンF1チーム代表、アンドレア・ステラとの対談全容
黒髪、情熱的な黒目、そして黒の眉毛はオレンジのユニフォームに映え、より濃く深い黒色に見えた。まるで日本の漫画から飛び出したような見た目をしたイタリア人のアンドレア・ステラ。また、彼は漫画の主人公のように、度重なる挑戦を乗り越え、努力と忍耐が遂に実を結んだサクセス・ストーリーの持ち主でもある。シンガポールGPで我々シガスポーツはマクラーレンF1のチーム代表を務めるアンドレア・ステラと独占対談する機会に恵まれた。こちらではその全容を紹介する。
Q ご自身はとても珍しいキャリアをお持ちですよね、航空宇宙産業からF1へどのように移行したのでしょうか?
「航空宇宙は大学で専攻していた分野で、私は航空宇宙工学と空気力学に情熱がありました」
「2000年に、私はフェラーリで面接を受ける機会に恵まれました。当時、多くの技術テストが行われていて、彼らはいくつかのポジションを探していたのです」
「フェラーリで受けた面接は成功でした。当時は、フェラーリの本部へ異動する嬉しさが半分、航空宇宙産業から去る悲しさが半分という感じでした」
「決断への気持ちが変わったのはV10マシンのテストの時でした。フィオラノ・サーキットであのエンジン音を聞いた時…. その音と振動だけで、これが自分の人生でやりたかったことだ、と確信したのです。」
Q パフォーマンスエンジニアから、F1の中でも特に印象的なチームの代表へキャリアアップしたことについて聞かせてください。
「私がチーム代表を担わせてもらっているという事実は特権だと思っていて、常に慎ましく謙虚でいようと心がけています」
「私はイギリスチームにいるイタリア人です。この役職を任せられたことに対し誇らしく喜ばしく思う一方で、チームで現実的に自分が何をできるかということにフォーカスしています」
「パフォーマンスエンジニアだったときは、優秀なエンジニアであることに集中していました。何がチームにとって正しいのか考え、チームに奉仕し、自分の技能を図るということです。それが、現在ではチーム代表です。この役割を果たす上で、チームに対して尊敬の意を払っています。」
Q 現代のF1においてチーム代表に必要な側面とは何か、ご自身の考えをお聞かせください。
「近年のF1では『複雑さ』が増していると思います。金銭的な規制、予算キャップ、そしてFIAからの監視など、新たな側面が加わりました。財政担当はチームマネジメントの隅から隅まで把握し相談しなくてはいけません」
「FIAやFOM、他のチームと政治的なやり取りをしながら、同時に、ドライバーやチームのファクトリー、ウィンドトンネルでは何が起きているかに注意を払う必要があります。もちろん全てを一人でこなすことは不可能なため、長期的なゴールを達成できるように上手く機能するチームを組織するのです。」
Q ご自身はフェルナンド・アロンソ選手と共にフェラーリを去り、彼を追って共にマクラーレンに異動しましたが、アロンソ選手との関係について教えてください。
「フェルナンドがマクラーレンに移籍すると決断した後、私たちはマクラーレンと会話をし始めました。私にとって、その頃、私はちょうど大切なサイクルの集結にありました。例えばマイケル・シューマッハとの6年間、キミ・ライコネン、そしてフェルナンド……. マクラーレンに異動することが、自分の人生の新しいチャプターを始める機会だと思ったのです。」
「将来が不確かであっても、フェルナンドと共に働きたいと思っていましたし、まるで自分の弟と一緒に働いているようで、私のキャリアにとって、とても大切なサイクルだったのです」
「フェルナンドと共に働くのは格別に素晴らしかったですし、それが我々のパフォーマンスが良かった理由でもあります。彼と共に達成したことに対し、とても誇りに思っています。」
Q ご自身はロン・デニス氏によりマクラーレンに呼ばれましたが、彼の時代のマクラーレンと、現在のCEOザク・ブラウン氏のマクラーレンの違いについて教えてください。
「私はレースエンジニアとしてチームに加わったので、ロン・デニスとは数えられる程度の会話しかしませんでした。もちろん簡単なポジションではありませんでしたが、チームの重役というわけでもありませんでしたので。でも、会話をした時は、ロンは私の話や経験に興味を持って聞いてくれました。彼は私のフェラーリでの経験やそれ以前のキャリアなど、全てについて知りたがっていました。」
「現在、私はチームマネジメントの重役としてチームに属しています。マクラーレンのチーム代表として、ザクとは毎日のように対話しています。彼との会話はいつも楽しく、彼のスポーツマンらしいエナジーを尊敬しています。彼は我々に自主性を求めていると思います。」
Q チーム代表としてお忙しい日々を送っていると思いますが、ご自身の一日は長いでしょうか?
「私の一日は長いですよ…. でも、睡眠の時間もしっかり確保しようとは心がけています。私と会話する全員に、ちゃんと寝るように、と勧めています」
「人をマシンに例えるとしたら、7日目まではプッシュできても、8日目には壊れてしまいます。そしてストレスと共にデグラデーションし始めます。私の一日は長いですが、適切な睡眠時間は確保しています。」
Q ご自身の日本GPにおける経験を聞かせてください。
「日本に行くことが大好きです。鈴鹿サーキットに到着すると、多くの情熱的な日本人ファンが見られ、その華やかさやカラフルさはとても特別な気持ちにさせてくれます。F1を抜きにしても、日本人の皆さんが大好きです」
「それと、この地にはたくさんの素晴らしい思い出があります。特に2003年、ミハエル・シューマッハと共にタイトルを獲得した時のことです。F1史上、最も素晴らしいレースの内の一つだと思います。もちろん精神的に疲れたレースでもありましたがね」
「チャンピオンを獲得した場でもあるという点でも、私は鈴鹿と日本全体に強い繋がりを感じています。」
我々はこのインタビューに応じてくれたアンドレア・ステラに感謝する。
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