レッドブル、スペインGP後に大きな転換点を迎える

F1という世界では、運命は数レースで大きく変わってしまう。しかし、2025年スペインGPで起こった出来事ほど重要な意味を持つ瞬間は稀だろう。このレースはレッドブル・レーシングのシーズンを破綻させただけでなく、チームの長年の哲学を根本から見直すことを余儀なくさせた可能性がある。
スペインGP終盤にマックス・フェルスタッペンがジョージ・ラッセルに対してしてしまった接触を、一部のコメンテーターは「危険行為」と評した。この結果、フェルスタッペンのタイトル防衛への挑戦は粉々に砕け散ったように見えた。しかし、より広範囲に及ぶダメージはポイント以上のものだ。
レッドブルにとって問題は、もはやフェルスタッペンが調子を取り戻せるかどうかではなく、シーズンが完全に手の届かないところへ行ってしまう前に、チームが軌道修正できるかどうかということである。
1人のドライバーに頼り切った戦略の代償
過去2年間のほぼ全期間において、レッドブルは事実上1人のドライバーに頼り切ったチームとして機能し、技術的リソース、戦略的焦点、そしてチームアイデンティティはフェルスタッペンを通じて集約してきた。セルジオ・ペレスの凋落は、この傾向をより明確にするだけだった。マシンの不安定性についての彼の抗議にもかかわらず、彼の役割は徐々に縮小されていった。
このような不均衡は支配的な時期には持続可能かもしれないが、マクラーレンやフェラーリといったライバルが両方のマシンで実力を向上させる中、レッドブルはコンストラクターズランキングで4位に甘んじている。わずか1年前には支配的だったチームにとって、これは驚愕の逆転である。
このことは、かつて2016年にフェルスタッペンがレッドブルでの華々しい勝利を飾ったバルセロナで明らかになった。しかし今年、このコースではチームがいかに迷走しているかを露呈した。マクラーレンのオスカー・ピアストリは、リスタート時にハードタイヤを装着していたフェルスタッペンを出し抜いた。シャルル・ルクレールは1コーナーへの際どい動きでフェルスタッペンを上回った。そしてラッセルは、レースの決定的瞬間において、オーバーテイクを実行した。
「ジョージ(ラッセル)がマックス(フェルスタッペン)に仕掛けた動きは本当に素晴らしいものだった」と、元F1ドライバーでスチュワードのジョニー・ハーバートは語った。「フェルスタッペンが他のドライバーたちを威圧して攻撃を躊躇させていた要素があった。しかし今や、他のドライバーたちは彼への挑戦する準備が出来ている」
レッドブルにとってより深刻なのは、フェルスタッペンが今やレース出場停止処分まであと1ポイントになってしまっていることだ。
チーム内の不安定性
内部的には、チームは一連の離脱と権力闘争に対処しなければならず、これが衰退を悪化させている。エイドリアン・ニューウェイはアストンマーティンへ移籍した。シニアエンジニア陣のロブ・マーシャルとジョナサン・ウィートリーはライバルチームで活躍している。影響力のあるアドバイザーであるヘルムート・マルコは、今のところ2026年に契約が満了する。
これに加えて、フェルスタッペン自身の将来も不確実になる。レッドブルが競争力のあるマシンや内部の安定性を提供できないなら、彼がチームに残る必要はないだろう。
この背景を踏まえ、レッドブルの焦点は転換しなければならない。ドライバーズタイトルという高い目標は過去のものとなった。チームはコンストラクターズランキングでの2位確保を目指すべきだ。レッドブルの基準からすれば控えめな目標かもしれないが、回復への具体的な道筋を示している。
そして、その転換の中心に角田裕毅が立っている。
角田裕毅の存在
長い間、レッドブルのジュニアチームで活躍してきた角田は、一貫したパフォーマンスを出すドライバーへと成熟した。彼がそこで過ごした期間は、ミッドフィールドのチームとしての台頭と時期を同じくしており、これは彼の技術的フィードバックと成長するレースクラフトに少なからずチームが助けられたものだ。
レッドブルに昇格するにあたり、角田は準備時間ゼロで日本GPに挑んだ。また、エミリア・ロマーニャGP予選でのクラッシュにより最新の空力アップグレードを欠いている状況であったため、マックス・フェルスタッペンとのギャップは一貫して1周あたり0.6~0.8秒の間で推移している。
角田の最近のフィードバックは明確だった。バルセロナでのレース後、彼はマシンの根本的な挙動について懸念を表明した。
「セットアップで何を変更しても、核心となるものを治すことができない」RB21は、彼が強調したように、タイヤの劣化と予測不可能なバランスに苦しんでおり、これらは片寄った開発優先順位の症状である。
角田が有意義に貢献できるようにするため、レッドブルはこれらの優先順位を見直し、それに応じてリソースを配分しなければならない。
リセットの初期兆候
レース後の展開は、このプロセスがすでに進行中であることを示唆している。角田はスペインに残り、ピレリタイヤテストに参加。2026年型マシンを想定して改造された「ミュールカー」を使用して150周を完了した。
その前日、彼はRB19を使用した別のTPC(旧車テスト)セッションに参加し、RB21の欠陥を特定するために重要なベンチマークとなるデータを提供した。
チーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、角田がレッドブルのファクトリーでのシミュレーターセッションとデータ分析をする計画があることを明かした。これは転換を表している。レッドブルは単に角田を起用するのではなく、開発サイクルに積極的に参加させているのである。
ヘルムート・マルコは、ドイツの放送局とのインタビューで、角田がシーズン終了までチームに留まることを明かした。「彼(角田)にはもっと時間が必要だ。それを与える」とマルコは語っていた。
自信から競争力へ
最近のメディアセッションで、角田は自信を認めた。これはF1において不可欠な資産だ。「FP1以降のすべての周回が非常に一貫していた。大きなミスはなかった」と彼はバルセロナで語った。「少なくとも今週末は自信があった。」
カナダGPで得られる予定である、より大きな技術的サポートとアップグレードにより、角田は予選でフェルスタッペンとのギャップを縮めることができるかもしれない。これが実現されれば、レッドブルは定期的に2台でポイントを獲得できるようになる。コンストラクターズランキングで2位を奪還するための重要な要件であり、2000万から3000万ドルの資金変動が懸かっている。
レッドブルの新たな章?
2025年スペインGPは、フェルスタッペンのタイトル防衛への希望を終わらせたレースとなっただけではなく、レッドブルの遅すぎた戦略的転換点となったようだ。
長年にわたり、チームは1人のドライバーのみをサポートすることで成功してきた。しかし今のF1での環境において、そのモデルは限界に達しているように見える。
レッドブルが今後のシーズンでチームを再確立するためには、完全なドライバーラインナップを受け入れなければならない。チームにとって角田の成長、経験、そして適応性は不可欠なのだ。
レッドブルは1人のドライバーを中心に構築されたチームではなく、F1の次の時代に向けてチームの基盤を築いているのかもしれない。
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