【F1技術解説】FIA、ADUOの詳細を正式発表―トンバジス技術部長「魔法の薬ではない」
FIA(国際自動車連盟)が、パワーユニットメーカー向け追加開発制度「ADUO」の詳細な運用スケジュールと仕組みを発表した。カナダGP後に最初の審査期間が終了し、基準を満たしたメーカーには追加開発機会が正式に付与される。
ADUOとは何か―“追加開発・アップグレード機会”の仕組み
ADUOとは、「Additional Development and Upgrade Opportunities(追加開発・アップグレード機会)」の略称だ。
この制度は、パフォーマンス面で遅れを抱えるパワーユニットメーカーがシーズン中に差を縮められるよう設計されたもので、ベンチマークとなるエンジンから2%以上遅れていると判定されたメーカーが対象となる。
対象メーカーには、遅れの度合いに応じて段階的に以下の支援が認められる。
- アップグレード投入機会の追加
- ダイナモ使用時間の増加
- コストキャップ外での追加開発予算
つまり、開発リソースの制限を部分的に緩和することで、巻き返しの余地を与える制度となっている。
「魔法の薬ではない」―FIA トンバジス技術部長が強調
FIAのシングルシーター技術ディレクターを務めるニコラス・トンバジス氏は、ADUOに対する“性能均等化策”という見方を明確に否定した。
「ADUOは性能均等化メカニズムではないということを明確にしておくことが重要だ。あるチームやメーカーが、突然高い燃料流量やバラスト調整といった恩恵を受けるわけではない。これはコストキャップ緩和の仕組みであり、基準を満たしたメーカーが規定の範囲内で開発を継続できるようにするものだ」
さらに、この制度を“魔法の解決策”ではないと強調した。
「過小評価すべきではないが、それでも最高のエンジンを作ることが勝利への道であることに変わりはない。これは魔法の薬ではなく、遅れているメーカーにボーナスポイントを与える制度でもない。あくまで、技術規則の枠内で追加開発を行う余地を与えるものだ」
つまり、ADUOは性能を直接引き上げる制度ではなく、開発する機会を追加する仕組みという位置付けだ。
レース中止で審査スケジュールを修正―最初の判定はカナダGP後に

FIAは当初、シーズンを4フェーズに分け、6レースごとに計3回の審査を実施する計画だった。予定では、第6戦、第12戦、第18戦終了後が評価ポイントとなるはずだったのだ。
しかし、バーレーンGPとサウジアラビアGPの中止によって年間スケジュールにズレが生じた。本来なら5月初旬のマイアミGPが第6戦となる予定だったが、実際には第4戦となった。
この状況を受け、FIAは折衷案を採用。5戦終了時点で、当初カレンダー上の第7戦終了後に相当するタイミングであるカナダGP後を、最初の審査期間終了とすることを決定した。
現在の審査期間は以下の通りとなっている。
- 第1期:開幕戦〜カナダGP後
- 第2期:モナコGP〜ハンガリーGP後
- 第3期:オランダGP〜メキシコGP後
カナダGP後に対象メーカーへ正式通知が行われ、その次のレースから追加アップグレード投入が可能となる。
ホンダへの影響は?
この制度で最も注目されているのが、アストンマーティンへパワーユニットを供給するホンダの扱いだ。
もしカナダGP後の最初の判定でホンダが基準を満たした場合、追加のベンチテスト時間や開発予算が正式に認められ、最大で約1,900万ドル(約30億円)規模の追加支援を受けられることになる。
もっとも、トンバジス氏が繰り返し強調したように、ADUOはあくまで“開発余地”を拡大する制度に過ぎない。最終的にその追加リソースをどれだけ有効活用し、パフォーマンス改善へ結びつけられるかは、HRCの技術力にかかっている。
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