アントネッリが明かしたブレーキ不調の全貌。次戦アメリカGPでワールドチャンピオン決定の可能性が
シンガポールGP決勝レースはコース上でのオーバーテイク劇こそ落ち着いた展開となったものの、中盤にファンをヒヤリとさせる場面があった。3位までポジションを上げてフィニッシュしたメルセデスのキミ・アントネッリが、レース中に突如「ブレーキに問題がある」とチームラジオで訴えたシーンだ。
前日のスプリントで1周目に壁へ激突してリタイアしたジョージ・ラッセル、そして前戦マレーシアでのエンジンブローというチームメイトの災難が続いていただけに、メルセデスの信頼性を巡って緊張が走った。レース後、アントネッリは当時の危機的状況とその裏側を明かした。
「ブレーキを踏んでも何も起きなかった」—VSC明けの恐怖
アントネッリはレース中の恐怖の瞬間を次のように振り返った。
「コーナー進入前に毎回アクセルを早めにオフにして空力ブレーキで減速(リフト&コースト)させ、制動力をあまり負荷しないように工夫してコーナーに入っていた。というのも、特にVSC解除後のリスタート時、ブレーキを踏んでも全く制動力が立ち上がらなかったんだ。制動性能が極端に落ちていて、もう少しでコンクリートウォールに突っ込むところだったよ。幸いにも事故にはならずに済んだけどね」
原因はブレーキ本体の過熱だけでなく、テレメトリーデータの喪失にもあった。
「ペダルストロークが非常に長くなっていて難度の高いドライビングを強いられた。でも、ある程度は予想できたことでもある。レースの4分の3を前車のスリップストリームに入って走っていたから、フロント周りには凄まじい熱がこもっていた。おまけにブレーキセンサーの障害でピット側も僕自身もブレーキの温度データを一切確認できなかったんだ。感触と経験だけを頼りに走るしかなかった。車内まで焦げ臭い匂いが漂ってきたから、相当な高温になっていたのは間違いなかったし、決して快適なドライブではなかったよ」
シンガポール特有の高温多湿な環境も相まって、19歳のルーキーにとっては過酷極まりない試練となった。
自己批判と、次戦オースティンでの戴冠に向けて
難関を乗り越えて価値ある3位表彰台を死守したアントネッリだが、週末全体の走りを冷静かつ自己批判的に振り返っている。
「正直言って、今週末の自分の走りはあまり良くなかったと感じている。もっとうまくやれたはずだ。だけど、1週間のオフを挟めば完全にリセットして戻ってこられる自信があるし、オースティン(アメリカGP)で走るのを今から楽しみにしているよ。結局のところ、自分がしっかりと仕事をこなさなければ結果はついてこない。目標を達成するためにはパフォーマンスを出すしかない、それだけのことだ」
2週間後にサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で開催される第18戦アメリカGPでは、アントネッリにとって自身初となるF1ワールドチャンピオン獲得を決定づける最初のチャンスが訪れる。
「タイトルが目と鼻の先にあるのは分かっている。だけど、僕がやるべきことは変わらない。コースに出て、勝利を目指し、最高のパフォーマンスを見せることだ」
トラブルを腕でカバーし表彰台を掴み取った若き天才が、いよいよF1王者の頂へと手を伸ばす。
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