【オーストリアGP】アントネッリ、メルセデスのアンダーカット警戒が招いた“2秒差”の誤算
オーストリアGPの決勝でジョージ・ラッセルとマックス・フェルスタッペンが繰り広げた、伝統のレッドブル・リンクでの息詰まる首位攻防戦。その遥か後方から、現役の選手権リーダーであるキミ・アントネッリが驚異的なスピードで急接近していた事実に、チェッカー間際のパドックは騒然となった。
最終的に、トップのラッセルとはわずか1.8秒差、2位のフェルスタッペンとは0.3秒差の3位表彰台に滑り込んだアントネッリ。しかし、アントネッリの表情に笑顔はなかった。
「言い訳はしない」19歳の王者が己に突きつける4〜5秒の失策
レース直後、アントネッリはメディアに対し、終盤の猛追よりもむしろ、オープニングラップを含むレース序盤の自身のドライビングの乱れを激しく非難した。
「レースの最初の数ラップ、僕は明らかに空回りしていた。本当に酷いドライビングだったし、あまりにも多くのミスを犯してしまったんだ。
ブレーキのフィーリングにも苦しんでいた。ペダルのストロークが長くなってしまい、正しい制動感覚を掴めなかった。だけど、そんなことは言い訳にならない。完全に僕自身のミスでポジションを落とし、そこで確実に4から5秒は失ってしまった。
タイヤ交換を行ってからはようやく調子が上がってきて、本来のまともなリズムを見つけることができた。終盤には完全に僕たちのペースを取り戻せていたけれど、残念ながら、前線で繰り広げられていた『勝者のパーティー』に合流するのが少しばかり遅すぎたよ」
メルセデスが恐れたレッドブルの罠。裏目に出た戦略のタイムロス
アントネッリ本人は自己批判に終始しているものの、パドックのエンジニアたちが注目しているのは、メルセデス陣営が選択した「保守的なピット戦略」だ。
時計を42周目に戻す。首位ラッセルと2位フェルスタッペンの差は1秒、そして3番手のアントネッリはそこから7秒後方を走行していた。ここでメルセデスの戦略部門は、フェルスタッペンによる「アンダーカット」を極度に警戒。その結果、43周目に首位のラッセルを安全のためにピットへ呼び戻す決断を下した。
ラッセルに長い最終スティントを担当させ、タイヤマネジメントに専念させる一方で、レッドブルはステイアウトを選択。さらにメルセデスは、アントネッリをフェルスタッペンよりもさらに長くコース上に引っ張る戦略を採った。
結果として、この引っ張りの戦略によってアントネッリは実質的に約3秒のタイムロスを被ることになる。
データが証明する勝機の存在。「あと3、4手早ければ……」
チェッカーが振られた瞬間のギャップを考えれば、メルセデスの計算が狂っていなければ、アントネッリが表彰台の頂点に立っていた可能性は極めて高い。
最終スティントにおけるアントネッリのW17は、コース上の誰よりも速かっただけでなく、タイヤのデグラデーションがほぼ「ゼロ」という驚異的なデータを叩き出していた。これほどの耐久性とペースの両立は、メルセデスのシミュレーションチームにとっても完全に想定外だったと言える。
仮にメルセデスがアントネッリのピットストップをあと3〜4周早く実行していれば、彼はフェルスタッペンの前、あるいはラッセルの真後ろでコースに復帰し、圧倒的なタイヤライフのアドバンテージを武器に、終盤の主役の座を完全に奪い取っていたはずだ。
パドックの一部では「メルセデスがラッセルとアントネッリの同士討ちを避けるために意図的に戦略をずらした」という陰謀論めいた噂も飛び交っているが、それは単なる憶測に過ぎない。確かな事実は、メルセデスのマシンの仕上がりが戦略チームの計算を遥かに凌駕していたという点、そしてそれゆえに、我々はF1史上最もエキサイティングだったかもしれない「同門対決のフィナーレ」を見損ねたという現実だけだ。
次戦イギリスGPは、メルセデスにとってもアントネッリにとっても、タイトル獲得への重要な試金石となる。19歳のリーダーがこの悔しさを英国の高速コーナーでどう晴らすのか、王座の行方から目が離せない。
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