ホーム » F1 ニュース » 【モナコGP】ホンダ折原GM、2026年型特有の「スロットルオフ時も全開」という過酷な燃焼制御、そしてアストンマーティンとの共同開発の現在地

【モナコGP】ホンダ折原GM、2026年型特有の「スロットルオフ時も全開」という過酷な燃焼制御、そしてアストンマーティンとの共同開発の現在地

· · ·
aston martin honda monaco gp 2026 【モナコGP】

抜きどころのない伝統のモンテカルロ市街地コース。年間で最もパワー感度が低く、ドライバビリティ(扱いやすさ)が勝負を分けるモナコGPの予選を終え、アストンマーティン・ホンダのパッケージは厳しい現実に直面した。フェルナンド・アロンソが「最悪の経験」と吐露したパッケージの現状について、ホンダ(HRC)の折原慎太郎氏が技術的な背景と、現在取り組んでいる改善の方向性を率直に語った。

FP1からの誤算と「ドライバビリティ」の壁

前戦カナダGPで一定の改善の兆しを見せていたホンダPU。しかし、モナコの走り出し(FP1)からチームは思ったような展開を作れずにいた。

「モナコはパワー感度が一番低いサーキットなので、我々もある程度の期待を持って準備をして臨んだ。ただ、FP1の走り出しからちょっと思ったようには展開が進まなかった。 前回(カナダ)よりはある程度良くなっているというコメントはドライバーから得ていたものの、やはりモナコで自信を持ってコーナーに入っていくためには、リアの安定性(スタビリティ)がまだ足りないという状況だった。FP1、FP2でデータを修正し、FP3である程度の改善は見えたものの、予選に向けて他チームに対する伸びしろ、つまりエンジンと車体のコンビネーションでのパフォーマンスが足りていないことが露呈した予選になってしまった」

コーナリング中も「ほぼ全開」2026年レギュレーションの盲点

ドライバーが「コーナーで後ろから押される、または引き込まれるような感覚」と表現する不安定さの正体は、2026年型新レギュレーションがもたらしたPU制御の極限状態にある。モナコ特有のチューニングの肝について、折原氏は次のように解説する。

「苦戦というか、チューニングの肝は大きく3つある。 1つ目はブレーキングからダウンシフトの瞬間。ギアボックス側が求めるトルクをPU側がきっちり出し、エンジン回転数を完全に追従させてリアをロックさせないこと。

2つ目はコーナーエントリーからオフスロットル(アクセルオフ)の領域。ドライバーが足を離しているからエンジンは何もしていないと思われがちだが、MGU-H(熱エネルギー回生)が廃止された現行レギュレーションでは、コーナリング中もエンジンをフル回転させて(エンジンの仕事量で)ターボを回し、ラグをなくすシステムになっている。つまり、スロットルオフでもエンジンはほぼ全開に近い状態で走っている。

ここでエンジンの燃焼がわずかでもバラつくと、トルクが上下し、ドライバーはコーナリング中に後ろから押されたり引かれたりする感覚に陥る。壁が近いモナコでこれが出ると、ドライバーはマージン(安全策)を置いて走らざるを得なくなる。いかにオフスロットル時に常に同じトルクで回してあげるか。ここが今の最大のチューニング規模(課題)になっている」

さらにモナコ特有の難しさとして、アウドラップ(計測に入り前の周)での満充電時のターボラグ対策を挙げた。 「アタックに入る際、バッテリーは満充電だ。その状態でオフスロットルにすると、MGU-K(運動エネルギー回生)はこれ以上バッテリーに電気を戻せないため、仕事(回生)ができなくなる。するとエンジン側を回してターボを維持することが難しくなる。特に最終コーナーを抜けていく局面でのターボラグのコントロールは非常に重要であり、かつ難しい部分」

マイアミ・カナダから続く課題とアストンマーティンとの協調

この「燃焼の安定性とトルクのバラつき」という課題は、マイアミGPやカナダGPから地続きのものだという。

「課題の本質は変わっていない。燃焼が安定しないから、毎回安定したトルクが出ない。マイアミまではその原因と対策を探っていたが、マイアミ以降は方向性が見つかり、チューニングによってどんどん(ライバルとの差が)縮まってきている。ただ、他のサーキットなら許容範囲に収まるレベルのバラつきであっても、一分のミスも許されないモナコでは、より高いレベルの安定性を求められる。そこが今回の大きな違いだ。 現在は、ピークパワーを求めて尖った設定にするのではなく、あえてピークを少し落としてでも、毎回全く同じ燃焼をして安定したトルクを得られるような方向性でデータ修正を行っている」

また、今年から新しくパートナーシップを組んだアストンマーティンとの開発について、かつて黄金時代を築いたレッドブル時代との違いにも言及した。 「レッドブルとは2018年、2019年からの長い歴史があり、お互いテストをかなり重ねて(ギヤボックスとの協調を)熟成させていく過程があった。アストンマーティンの場合は、彼ら自身もギヤボックスを初めて内製(自社製造)しているという点がある。レッドブルは既にノウハウを持っていたが、アストンマーティンも今回初めて(ギヤボックスを)作るというところが、当時との一番大きな差だと思う」

夏の大型アップデートに向けて「今やるべきこと」

アストンマーティン側からは、夏以降に大規模なアップデートが投入されることが示唆されている。それまでの厳しい期間をどう戦うのか。

「この差を縮めていくプロセスは夏に向けて進めていく内容ですし、その過程で得られた『こういうふうにコントロールしていけばいい』という知見は、次の新しいアップデートを入れるときにも必ず役立つ。 劇的にパフォーマンスが上がるまでは厳しいレースが続くと思うが、たとえ後方での争いであっても、1コマでもタイムを積み上げ、オペレーションで前に出られるように頑張っていく。細かいところをチームと詰める関係性を今から構築しておくことで、夏に大きなアップデートが入った際、それを一発でマシンのパフォーマンスへと繋げることができると考えている。順位の見栄えはすぐには変わらないかもしれないが、常に少しでもパフォーマンスを上げる泥臭い作業を、チームと一緒にやり続けていく」

【関連記事】

類似投稿