【アストンマーティンF1】ペドロ・デ・ラ・ロサが語る、ホンダとの新章|独占インタビュー

Pedro de la Rosa
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グランプリ週末のラスベガスでは多くのスターがパドックを行き交うが、ペドロ・デ・ラ・ロサほど温かさと親しみを持って歩く人物はめったにいない。1999年の参戦初期からF1を経験してきた者ならではの落ち着きと自信が漂う。それでいて、アストンマーティンF1チームのアンバサダーとして今もなお仕事を心から楽しんでいることが伝わってくる。

「アストンマーティンでは、いつだって刺激的な車を運転できます」と彼は言う。「それが私を夢中にさせるんです。ほかとはまったく違う魅力があります」

今週末のラスベガスで、デ・ラ・ロサはホットラップの準備を進めている。ある日はヴァンテージで、また別の日はGT4仕様のマシンでサーキットを走る予定だ。さらに「数週間後には、またF1マシンを運転しますよ。シミュレーターですが」と何気ない調子で話す。彼にとってこの役目は、見栄えのためではなく、心と本能が求める延長にあるのだ。

Aston Martin Las Vegas 2025
AMR25

計画になかった復帰

今でこそチームに欠かせない存在となったデ・ラ・ロサだが、アストンマーティンに加わる前は、F1に戻るつもりなどまったくなかったという。転機は2022年。90年代後半にリザーブドライバーとして過ごしたジョーダングランプリの旧工場跡を訪れた際のことだ。

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「感情が込み上げてきました」と、デ・ラ・ロサは語る。風洞、シミュレーター、新しいキャンパス──すべて建設途中で泥まみれ、未完成のままだったが、確かな「未来」の匂いがしたという。そして帰宅後、妻に「戻りたい」と告げると、「気でも狂ったの?」と返されたという。しかし、彼の意思は揺らがなかった。

「『このチームは勝つ。そして私はその一員になりたい』そう思ったんです」と話すデ・ラ・ロサを突き動かしたのは、過去を懐かしむ心ではなく、純粋な「野心」だった。

フェルナンド・アロンソ(左)ペドロ・デ・ラ・ロサ(右)
フェルナンド・アロンソ(左)ペドロ・デ・ラ・ロサ(右)

理想ではなく、行動でつくるチーム

デ・ラ・ロサの語り口には、あらゆる種類のF1チームを見てきた者ならではの明晰さがある。そして彼は、アストンマーティンのプロジェクトの規模についても率直に語っている。

「私たちは世界チャンピオンになるための旅の途中にいます。誰もが勝ちたいと願っています。でも、『勝つために必要な行動を取る』チームは多くありません」

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その違いは、トップの気質に宿るという。アストンマーティンのオーナー、ローレンス・ストロールについて語るとき、デ・ラ・ロサは一切迷いを見せない。

「ローレンスと一緒にいると、物事が必ず実行されるとわかります。ミーティングを終えた時点で、『彼なら必ずやり遂げる』と確信できます」

過去3年間の投資は「途方もない規模」であり、それは単なる金額ではなく「意味のある投資」だという。2024年は厳しいシーズンだったが、チーム内部の信念は揺るがない。

「もっと速くなっているはずだったのですが」と、デ・ラ・ロサは認める。「メカニックや工場のスタッフにとってつらい状況です。でも、良くなるという自信は揺らぎません。私たちは必ずトップに立ちます」

Aston Martin  2025

ホンダとの新章

その未来の一部を担うのがホンダだ。デ・ラ・ロサの日本との結びつきは深い。1990年代半ばに「日本で3年間レースをした経験が、私のF1への道を切り開きました」と語る。そして今も、日本文化への敬意を忘れない。

「日本にいなければ、私はF1にたどり着けなかったでしょう。ホンダを迎えることに本当にワクワクしています。日本の方々と仕事をすると、いつもすばらしい成果が出ます」

アストンマーティンとホンダをつなぐ架け橋として、アンディ・コーウェルの存在を、優れたマネージャーであり、一流のエンジニアでもあると強調する。デ・ラ・ロサは、「この組み合わせは非常に貴重です」と力説する。

そして、中心に立つのがエイドリアン・ニューウェイだ。デ・ラ・ロサは、マクラーレン時代をともに過ごしている。「彼がどれほど優れているか説明する必要はありません。結果がすべて語っています。彼はマシン全体を見渡して考える…F1史上最高の存在です」

ただし、ニューウェイの影響はエアロダイナミクスにとどまらないという。「彼の貢献をラップタイムで表すことはできません。誰もが彼と一緒に働きたいと思っています。主な理由は、彼から学ぶため。若く優秀な人材を引き寄せるためにも、非常に重要なことです」

インタビュー後まもなく、チームはニューウェイが技術職に加えてチーム代表を兼任すると発表。同時にアンディ・コーウェルは、ホンダとの連携をより深める役割へ異動するという。新体制は次のレギュレーション時代に向け、組織全体の効率性とマネジメント強化を狙うものだ。

エイドリアン・ニューウェイ
エイドリアン・ニューウェイ

アイデンティティと誇り

デ・ラ・ロサにとって、アストンマーティンのアイデンティティは誠実であることが不可欠だ。「私たちは、自分たちが本当に何者なのかを体現したいのです。若く、野心に満ちたチームであるということをです」

そして「ヘリテージ(伝統)」の意味は、単なるイメージでもブランド戦略でもない。「アストンマーティンは110年以上の歴史を持つブランドです。このグリーンのカラーと胸のロゴを身につけるのは、本当に特別です」

それは、工場を訪れたあの日に感じた誇りそのもの。そして、その誇りこそがデ・ラ・ロサを十数年ぶりにF1へ呼び戻した。

新時代を迎える中で、彼の目は現実的でありながら確信に満ちている。「簡単な道ではありません。でも、私たちには最高のチームが揃っていると確信しています」

共同取材・文:山口 京香 Kai Yamaguchi

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