キャデラックF1参戦へ、ロードン代表「日本のレースが待ちきれない」｜独占インタビュー
ラスベガスGPでキャデラックF1のグレアム・ロードン代表が取材に応じ、2026年参戦に向けた準備状況と戦略について語った。
「時間は私たちの敵です。メルボルンでレースができる状態にしなければなりません」とロードンは率直に語る。キャデラックは単にF1マシンを開発するだけでなく、工場建設と1000人規模の人材採用を並行して進めている。
ゼネラルモーターズ（GM）の技術力に加え、レイカーズ、ドジャース、チェルシーFCを傘下に持つTWGがオーナーとして参画。この組み合わせが、プロジェクトに大規模なバックアップ体制をもたらしている。
2026年が迫るほどプレッシャーと高揚感が増していく一方で、グレアム・ロードンは「近づけば近づくほどワクワクします」と期待を寄せている。「すべてが形になりつつあります。膨大な作業量、巨額の投資、数多くのスタッフが関わっています。現時点ではすべて順調です。それを維持するために戦い続けるのが、私たちの仕事です。それでもやはり、実際に物事が動き出すと、興奮せずにはいられません」
“ワイルド・ウェスト”の時代から、安定した現代F1へ
グレアム・ロードンは、F1の中でも一部のベテランたちが「黄金期」と呼ぶ、ヴァージン／マルシャ時代を経験してきた人物でもある。当時は、リチャード・ブランソンがパドックにロックンロールの風を持ち込み、ルールはマシン並みのスピードで変化していた。
「当時のF1は今よりずっと不安定でした。規則はほぼ毎週のように変わり、コストキャップは1000万から2000万、4000万、そして無制限へと揺れ動きました。技術規則も頻繁に変わり、まるで“ワイルド・ウエスト”＝無法地帯でした。毎週違う課題に直面していましたね」
今日のF1は巨大で複雑だが、はるかに予測しやすい世界になっている。「F1は大きく進化しました。マシンは複雑になり、組織も複雑になり、F1全体が大きくなりました。でも、ずっと安定しているんです。そのおかげで、少しだけ楽になっています」
過去の教訓から、チームは経験豊富な2名のドライバー起用を決定。セルジオ・ペレスとバルテリ・ボッタスの組み合わせは、新チームにとって重要な戦力となる。
新しいファンや日本市場への期待
ロードンにとって、思いがけない喜びのひとつは、F1を最近知ったばかりの新しいファンと話すことだ。彼らがF1、そしてこれからはキャデラックを初めて発見していく姿を見るのが楽しいという。
「私はF1に情熱を持っています。そして、F1を見始めたばかりの人たちが楽しんでいる姿に出会えることは、この仕事の大きな喜びのひとつなんです。彼らは、私が感じているのと同じ楽しさをそこから受け取ってくれています」
キャデラックのロゴが入ったチームシャツは、すでに“宣伝効果”を発揮し始めている。「オースティンでもメキシコでも、キャデラックF1チームのシャツを着て歩いているだけで、とにかく道で声をかけられるんです。『早くグリッドに立つところが見たい』『本当に楽しみだよ』とたくさん言われました。ファンとのつながりを感じ始めているのは、本当にうれしいことです」
また、日本の話題になると、ロードンは迷わず語り始める。「日本でレースをするのが待ちきれません。日本のファンは情熱がすごいんです。その熱意と同時に、ドライバーやチームへのリスペクトもとても強い。本当に特別な場所なんですよ」
セルジオ・ペレスとそのチームメイトのバルテリ・ボッタスが日本でどう受け入れられるかについても「2人とも、日本のファンにとても人気があります。きっと温かく迎えられるはずです」と前向きに話した。
一方で、重要なのはスタンドの声援だけではない。「日本はとても重要な市場なんです。キャデラックやGMにとってだけではありません。日本では野球がものすごく人気ですよね」同じ傘下にあるロサンゼルス・ドジャースを通じ、野球もまた、日本との自然な架け橋になる。始球式のようなクロスオーバーの瞬間が、ブランドの認知や信頼構築につながるという。
技術面では、トヨタの風洞を使用する協力関係がすでに構築されている。「トヨタとは良好な関係にあり、大きな敬意を持っています」とロードンは語った。将来的な関係拡大については慎重ながら、米国ブランドと日本メーカーの協力関係は戦略の重要な柱だ。
2026年開幕へ向けて
ロードンの優先順位は明確だ——開幕に間に合わせ、万全の準備で臨み、初戦から競争力を発揮すること。工場、スタッフ、技術、そして世界中のファンの期待。すべてが2026年メルボルンの開幕戦に向けて収束していく。
「現時点ではすべて順調です。それを維持するために戦い続けるのが私たちの仕事です」
メルボルンは待ってくれない。そして、彼もまた、決して立ち止まらない。キャデラックF1の挑戦が、いよいよ始まる。
共同取材・文：山口 京香 Kai Yamaguchi
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