アルファタウリは2023年はじめに最も遅かったマシンをどう作り変えたか

アルファタウリはシーズンはじめ最も遅いマシンだったが、最終戦のアブダビでは角田が予選6位を獲得し、5番目に早いマシンとなったAT04のパフォーマンスを示した。

これは当初期待外れだったパフォーマンスを挽回するため、年間を通して多大な努力があったことを表している。

当初の弱点は、車高が最大になる低速コーナー進入時の安定性にあった。ドライバーたちは、これによってコーナーのエイペックスに向かう速度が制限されていると報告していた。

この車はその空力特性により、速度が低下し車高が高くなるにつれて、ダウンフォースが急激に失われていた。先週末のアブダビで、マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは、彼らのデータによると、低速コーナーを最速で通過できるマシンはアルファタウリであると述べた。

この変化は降って湧いたような開発ではなく、マシンの弱点をターゲットにした継続的な風洞実験によって達成された。その実験は、現行のレギュレーション化ではパフォーマンスのカギとなるフロア下に集中して行われた。

残念ながら、マシンがクレーンでつられる場面以外でフロア下を見る機会はないが、ジョルジオ・ピオラの図面には、フロア端やトンネル吸気口まわりのフェンスに変更が加えられていることが示されており、フロア下の変化が目に見える形として現れている。

フェンスは空気の流れが分かれるかを決定しており、空気はマシンの底で低圧状態を作り出すトンネルと、フロア端へと流れていく。渦がフロアの端に沿って強く作用するほど、床下の密閉効果が大きくなる。

空力担当者は2つの流れを最適に分割することを追い求めているが、実際はただふたつに分ける以上に複雑だ。なぜなら、気流の挙動は車の車高に応じて大きく変化し、それは車の速度に応じて常に変化するからである。この流れの分割は、高い車高、低い車高、またはその中間にあるあらゆるシーンに合わせて最適化することができる。

AT04が走ってすぐに、このマシンのコンセプトで重視した点が間違っていたことが明らかになった。それが当初の低速コーナーのパフォーマンスの悪さの根本であった。新しいフロアが作成されるたびに、チームは理解を深めていった。

フロアへの最初の変更は、早くもメルボルンの第3戦で行われた。その内容は、チームからの情報によって初めてトンネル間の平坦な「カヌー」セクションの形状が変更されたことだとわかった。

このフロアの目に見えるポイントは、外側のベーン(翼)が完全に再形成され、内側のベーンが再調整されたことだ。これは革新的なアップデートではなかったが、開発の第一歩だった。

7月のイギリスGPでは新たなフロアが導入され、大きな一歩を踏み出した。フロアボディ、フェンス、フロアエッジの形状、ディフューザーはすべて新しくなった。

コークボトル部分の上の車幅が広くなったことで、高い静圧を与え、ヨーやステアによって前輪の後流損失が車体に影響する程度が軽減された。これにより、走行時の空気の流れの質が向上するため、床の端からより多くの荷重が発生する。

テクニカル ディレクターのジョディ・エギントンは、シルバーストーンでの床が特に重要な要素であり、彼らの理解における画期的な出来事であることを認めた。

彼は次のように述べた。「それによって新たな素晴らしいベースラインが得られ、それ以降のすべてのアップデートはそれを基にしていた。それは我々が『よし、成果が出ている。風洞実験での我々の考え方がうまくいっている。この方向に進み続けよう。』と言った瞬間だった。」

最大の視覚的変化はシンガポールで起こり、サイドポッドが持ち上げられ、気流がサイドポッド前部のアンダーカットに当たり、より強力な渦の生成されるようになった。この渦はその後、フロアの端まで引き込まれ、ベーンからそこに向けられていた流れを増大させる。

オースティンにまた新しいフロアが登場し、このアップデートは角田裕毅を大いに興奮させた。次のメキシコGPでは、ダニエル・リカルドがレッドブルのマックス・フェルスタッペンからわずか0.15秒差の2列目で予選を通過した。

最後にアブダビについては、さらに別のフロアが持ち込まれた。このフロアでは、最も外側のフェンスが再配置されており、フロアエッジウィングの発生するエネルギーをより高めるため、前方部分が削られ、後方が広くなった。これにより、その部分にかかる荷重が直接的に増加すると言われている。

トラックサイドエンジニアリングチーフのジョナサン・エドールズは、チームがコンストラクターズチャンピオンシップでウィリアムズを追い越して7位に浮上しようとする中、最終レースに新しいフロアを導入するにあたっての背景を語った。

「数週間前の風洞実験で、新たな興味深い方向性を見つけたので、シーズン最後のレースだったにもかかわらず、新しい部品を作ってマシンに搭載したいと思っていた」と彼は語った。「それらを時間内に間に合わせるだけでも強気のスケジュールであり、アップデート部品は各車に1つずつ、計2つしか作成されず、スペアはなかった。」

「現在、低速コーナーでのパフォーマンスは良好だが、来年に向けてマシンの空力効率に真剣に取り組む必要がある。なぜなら、我々は現在ストレートで最も遅いマシンの1つだからだ。ダウンフォースと空気抵抗のバランスを考え直す必要がある。」

マシン開発は決して止まらず、F1の頭脳たちは今後もさらに多くのことを発見し続けるだろう。

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