【イギリスGP】ハミルトン、聖地シルバーストンでの“異様な”エネルギーマネジメントに警鐘-牙を抜かれる超高速バトルへ
かつてミハエル・シューマッハがスパ・フランコルシャンを「私のリビングルーム」と呼んだように、7冠王者ルイス・ハミルトンにとってのそれは、間違いなくこのイギリスGP、シルバーストン・サーキットだ。2008年にマクラーレンで初勝利を挙げて以来、メルセデスと共に紡いだ圧倒的な歴史を含め、これまで実に9度の母国優勝を飾ってきた。
フェラーリに移籍して迎える今回のイギリスGP。ハミルトンは「オーストリアのレッドブル・リンクに比べれば、シルバーストンの特性の方が我々のSF-26に合っているはずだ」と期待を寄せる。前戦ではストレートだけでコンマ4秒を失う苦境に喘いだが、イギリスの高速コーナー群と低い気温は、マイスターにとって反撃の舞台として申し分ない。
しかし、伝統のコースを戦う上で、ハミルトンを含む全ドライバーの頭を悩ませているのが、あまりにも不自然な「エネルギーマネジメント」のレギュレーションだ。
「全ドライバーが激しく議論している」聖地を襲う異様な現状
ハミルトンは、パドックの裏側でドライバーたちがこのシルバーストンのレイアウトと2026年型マシンの相性について、強い違和感を共有していることを明かした。
「今、ドライバーたちの間では、ここでのエネルギー管理がいかに『奇妙で、歪んだもの』になるかについて、非常に激しい議論が交わされている。
このコースレイアウトは、ストレートの後に回り込むような高速コーナーが続くため、バッテリーをフルに充電するタイミングが十分に確保できないんだ。これが実際のレース特性にどんな影響を及ぼすのか、僕自身も非常に好奇心と不安が入り混じった気持ちでいる」
すでにレッドブルのフェルスタッペンが「シミュレーターで笑うしかなかった。ストレートで車が減速する」と批判していたが、ハミルトンはさらに具体的に、シルバーストンを象徴する伝説的コーナーの“変貌”を予言した。
コプスでシフトダウン、マゴッツはコースティング─失われるドライビングプレジャー
「かつての僕たちは、超高速のコプスを全開で駆け抜けていた。だけど今回は、エネルギーを回収するために、わざわざシフトダウンしなければならないだろう。
左右に激しいGがかかるマゴッツとベケッツの切り返しも、以前なら息をのむようなスリルがあった。しかし今回は、電気をセーブするためにアクセルを戻し、惰性で転がすようなドライビングを強いられる。
確実に言えるのは、過去数年間に僕たちがこのトラックで感じていたような、純粋な走る楽しさはそこにはない、ということだ」
ハンス(HRC)の折原エンジニアが「ドライバーの踏み込み予想がズレると一貫性が失われる」と語っていた通り、ドライバーは右足の限界に挑むのではなく、システムの充電要求にドライビングを合わせ込まなければならない状況に陥っている。
1回限りの練習走行、試される「20年間の経験」
さらに今週末のイギリスGPを難解にしているのが、スプリントフォーマットの採用だ。金曜日にたった1度のフリープラクティスを行った後、すぐに予選へと突入する。
「チームのエンジニアたちからは、『ルイス、君はここシルバーストンで一体どんな特殊な走りをしているんだ?』と質問攻めに遭っているよ。
でも今回は、フリー走行が1回しかない。その直後にはもうスプリント予選が始まってしまうんだ。こうなると、ここで20年間戦ってきた僕の経験がどれだけ活きるか、そこが最大の鍵になる」
20回目の母国GPという節目を迎え、「スタンドを見上げるたびに息をのむ。ファンの応援はプレッシャーではなく、僕の背中を押し出してくれる最高のエネルギーだ」と語るハミルトン。
最愛のリビングルームが、複雑怪奇なハイブリッドレギュレーションによって牙を抜かれようとしている今、ハミルトンはその圧倒的な経験値を武器に、フェラーリをコストキャップ下の開発競争で苦しむアロンソらライバルの前へ、そしてレッドブルの牙城へと導くことができるだろうか。その職人技とも言えるエネマネの制御に注目が集まる。
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