ギュンター・シュタイナー、ハース退団の主な理由

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NetflixのF1ドキュメンタリー『Drive to Survive』でも大人気だったギュンター・シュタイナーが、ゼロから立ち上げに携わり、2016年にF1参戦を果たしたハースチームと袂を分かち、小松礼雄が昇格したというニュースが流れたのは、わずか数日前のことだった。

ある意味、ショックなこのニュース。結局のところ、シュタイナーはチームを存続させるだけでなく、グリッド上で最も少ない予算で一貫して競争力のあるチームにするために、死にものぐるいで戦ってきた。シュタイナーにとって、チームは”自分の子供”のようなものなのだ。

信じられないほど困難な時期や、眠れない夜が何百日もあったはずだ。物凄いストレスが負担になったこともあっただろう。しかし、彼はその一瞬一瞬を心の底から愛している。それが彼の活力になっていた。そして彼は、吹き荒れる嵐をことごとく切り抜け、見事な仕事を成し遂げてきた。

フェラーリから次々とパーツを取り上げることで、彼がルールをフルに活用しているというライバルチームからの不満があった。エナジードリンクのスポンサーであるリッチ・エナジー社との対立や、コロナによるパンデミックの際にチームを維持するための戦いもあった。そして、ロシアのスポンサーであるウラルカリやロシア人ドライバーのニキータ・マゼピンとの関係断絶もあった。

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そのような状況のなかでも、シュタイナーは冷静に仕事をこなし、終始、一緒に仕事をするのが好きだった。パドックでシュタイナーのために時間を作らない人を見つけるのは難しいだろう。それ自体が信じられない偉業だ。

ハースが8シーズンも存続し、過去20年間にF1に参戦した新チームで唯一、永続的な地位を確立し、安定したチームとなったのは驚くべき功績であり、その功績の大部分はシュタイナーの存在が大きいだろう。

シュタイナーがチームに注ぎ込んできたもの、そしてチームが正しい戦略で前進するための基盤を持っているにもかかわらず、この関係が終わってしまうのは、関係者全員にとって悲しいことであった。

しかし、一方でそれが驚きではない理由もある。ハースは2023年のコンストラクターズランキングで最下位に沈み、史上2番目に悪いシーズンを過ごした。

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前年から2つ順位を落とし、賞金も2000万ドルほどを失った。これはハースのようなチームにとっては巨額である。

ハースの投資課題

ハースの課題のひとつは、チームに投資する資金が不足していることだ。最近、インフラやツールなどに使える資本支出手当が2,000万ドル増額された。

ライバルの多くはその資金を捻出して運営を改善できるが、ハースにとってははるかに厳しい。ここ数年、彼らはタイトルスポンサーのマネーグラムなど外部からの資金をうまく取り込んでいるが、大手メーカーの後ろ盾はない。

その手当を活用し、短期的にライバルに遅れをとっている自分たちの能力を向上させるには、ジーン・ハースが私財を投じる必要がある。昨年オースティンで導入された大型アップグレードパッケージはまさにそれだった。情報筋によれば、その費用は約800万ドル。だが結果は期待外れで、ニコ・ヒュルケンベルグは旧スペックに戻し、そのほうが速かった。

高額なアップグレードにも関わらず、結果が期待外れだっただけにジーン・ハースは失望し、彼を苛立たせたのは明らかだ。彼が再び自らの資金を投ずることに消極的になったとしても、それは驚きではないだろう。

冬の恒例行事であるシュタイナーとの会談では、チームの現状と将来の展望を確認するため、投資について、そして何かがうまくいっていないからこそ変革が必要だという話題が中心的な議題となったようだ。

ジーン・ハースがシュタイナーに日々の運営を任せ、彼の判断を信頼していたからだ。このアプローチがチームの運営を最大限に引き出し、チームがこのスポーツの安定した一員となる鍵となったのだ。

しかし、その関係はここ数年、チームが乗り越えてきた前述のような嵐によって試されてきたものであり、昨シーズンのようなタフな1年の後、共通の土台を見つけることはできなかったようだ。

チーム代表としてシュタイナーの穴を埋める

ジーン・ハースは、オトマー・サフナウアー、マッティア・ビノット、ヨースト・カピートといった経験豊富なチーム代表経験者ではなく、代わりに小松礼雄エンジニアリング・ディレクターをチーム代表に昇格させることで、シュタイナーの抜けた大きな穴を埋める。

信頼も厚く、チーム創設当初から在籍している小松は、現在はトラックサイドでエンジニアリングを統括する立場にある。

こうして2人は別々の道を歩むことになった。F1とラリーで膨大な経験を積んだシュタイナーは、モータースポーツ・マネジメント、メディア、あるいは自身の会社に専念するなど、次のステップの選択肢には事欠かないだろう。

シュタイナーの役割は包括的であったため、ハースは人事、管理、財務、購買、マーケティング、コミュニケーションといった非競争的な部分を担当する最高執行責任者の募集を開始するという決定を下し、小松はパフォーマンスと彼の強みに集中することができる。

B・A・Rホンダで働き、ルノーで10年を過ごし、ハースでも同じ期間を過ごそうとしている。小松はタイヤ洗浄からレース戦略まで、今までありとあらゆる仕事をこなしてきた。

特にハースのような小規模なチームでは、仕事量を分散させるための大きな組織もない。シュタイナーのような人物の後任になるのは並大抵のことではないだろう。

シュタイナーは過去10年間、ハースの顔だった。ハースの内外から絶大な人気を誇り、同世代のチーム代表たちからも尊敬されている。彼は根っからのレーサーでもあり、膨大な上級管理職の経験を持ち、大きなプレッシャーを肩に背負うことができる。

小松はその資質を目の当たりにしているはずだ。シュタイナーが始めた仕事を引き継ぎ、ハースを次の章へと導くのは彼だ。ハースと小松のこれからが楽しみだ。

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