ニューウェイ氏、アストンマーティン「AMR26」の設計哲学を語る
「エイドリアン・ニューウェイは、いったい何を仕込んできたのか?」。2026年に向けて、最も大きな注目を集めるマシンのひとつが、アストンマーティンの新型F1マシン「AMR26」だ。その姿が初めて明らかになった瞬間から、パドックでは同じ問いが何度も繰り返されている。
F1界最高のデザイナーと称されるニューウェイ氏が、アストンマーティンで過ごした約10か月。そして、全面刷新となる2026年レギュレーションに向けて描いた設計思想。AMR26に込められた哲学が、今少しずつ見え始めている。
新型マシン公開の舞台裏─追跡された“フライト”
AMR26がバーミンガム空港を飛び立ち、ジローナへ向かった1月28日。そのフライトは、世界で2番目に追跡された便となった。
バルセロナのカタロニア・サーキットでは、アストンマーティンのメカニックたちが徹夜で準備を進めていた。シェイクダウン最終日前日の終盤、ついにマシンが姿を現す。その瞬間、F1界の視線は一斉にAMR26へと注がれた。
「お気に入りの部分はない」
AMR26について、最も満足している部分はどこなのか。その問いに対するニューウェイ氏の答えは、いかにも彼らしいものだった。
「この質問はよく受けるが、正直“ここを見てくれ”というお気に入りの部分はない。私にとってマシンの設計とは、常に“全体のパッケージ”だ。どこかひとつのパーツが決定的な差を生むわけではない。すべての要素がどう組み合わさり、どう互いに機能し合い、そしてドライバーと調和しながら、空力・メカニカル・車両ダイナミクスのすべてが一体として働くか。それこそが重要なのだ」
特定のパーツではなく、マシン全体の調和こそが性能を決める。それが、ニューウェイ氏の一貫した考え方だ。
「目立つ部分がないことが、逆にこのマシンの特徴なのか?」という問いには、わずかに笑みを浮かべてこう答えた。
「そうだね」
AMR26の設計アプローチ
ニューウェイ氏は、設計の出発点について次のように説明する。
「まずはマシン全体のパッケージングから始める。ホイールベースの中で車体をどう配置するか、主要な質量をどこに置くか。そこから前後サスペンションへと作業を進めていく」
「フロントとリアのサスペンションは、いずれも空気の流れをコントロールするうえで非常に重要な役割を担っている。今年はフロントウイングやノーズ形状もいくらか異なるし、サイドポッド、さらにマシン後方の処理も、これまでとは明確に違うものになっている」
2026年型マシンでは、重量配分、サスペンション、ウイング形状、サイドポッド、そしてリア周辺の処理まで、すべてが連動し、理想的な空気の流れを作り出すことが重要になるという。
新レギュレーションの“面白さ”
また、ニューウェイ氏は新レギュレーションの魅力についても語っている。
「他チームが我々と似た解決策を採るかどうかはわからない。実際に他のマシンが出揃うまでは、わからないだろう」
「我々は、自分たちにとって正しいと考える方向性を追求しただけだ。他のチームは別の方向を選ぶかもしれない。それこそが新レギュレーションの面白さであり、各チームがどんな解釈を持ち込むのか、見るのが楽しみだ」
極めてタイトなパッケージング
AMR26の大きな特徴のひとつが、その極めてタイトなパッケージングだ。
「かなりタイトだ。アストンマーティンがこれまでに試みたことがないほど、タイトなパッケージになっていると思う」
この設計を実現するためには、空力設計とメカニカル設計の密接な連携が不可欠だった。
「我々が望んだ空力形状を実現するには、メカニカルデザイナーとの非常に緊密な協力が必要だった。ここのメカニカルデザイナーたちは、その哲学を本当に受け入れてくれた。彼らの作業は決して簡単ではなかったが、その難題にしっかりと応えてくれたと思っている」
設計哲学は「まだ正解がわからない」

2026年は、完全に新しいレギュレーションの年だ。ニューウェイ氏自身も、確信を持っているわけではない。
「我々はレギュレーションを細かく分析し、どのような空力の流れを作りたいのかを考え、その流れを実現するための形状を作り上げてきた。非常に包括的なアプローチだ。ただ、正直に言えば、全く新しいレギュレーションのもとでは、どの哲学が正解なのかは誰にもわからない」
「あなたでもわからないのか?」と問われると、ニューウェイ氏は笑いながらこう答えた。
「私でさえわからない。どの解釈が最適で、どの哲学が正しいのか、確信を持つことはできない」
限られた時間の中で、チームはひとつの方向性を選び、そこにすべてを注いだ。
「スケジュールは非常にタイトだった。そのため、我々はある方向性を決め、それを追求した。それが正しかったかどうかは、時間が経たなければわからない。ただ、どこかの道を選び、前に進むしかないのだ」
AMR26は“攻めた設計”なのか
今回のマシンは、いわゆる“攻めた設計”なのだろうか。ニューウェイ氏は次のように語る。
「私は自分の設計を攻めているとは考えていない。自分たちが正しいと思う方向を追求するだけだ」
とはいえ、外部から見れば、新しい要素が多いマシンであることは間違いない。
「我々の選んだ方向は、確かに攻めていると解釈されるかもしれない。これまで必ずしも採られてこなかった特徴がいくつもある。それを“攻め”と呼ぶのかどうかは……そうかもしれないし、そうでないかもしれない」
2026年F1の鍵を握るマシン
AMR26は、単なる新車ではない。
ホンダとのワークス体制、ニューウェイ氏の加入、そして新レギュレーション。すべてが重なる2026年において、このマシンはアストンマーティンの未来を左右する重要なプロジェクトとなる。
ニューウェイ氏自身は結果を断言しない。だが、彼らが選んだ方向性は、はっきりとしている。
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