ヴォルフ氏、マイアミGPを前にレース改善・FIAへの本音を語る
一ヶ月の休みを経て、マイアミGPを前にメルセデスのチーム代表、トト・ヴォルフ氏は記者会見でレース改善・キミ・アントネッリの成長・FIAへの本音などを語った。日本GPでのオリバー・ベアマンのクラッシュを受けてFIAや各チーム、ドライバーはレギュレーションを見直す必要があるとしていた。その件についてウォルフ氏はこう答えた。
「我々は良い解決策に近づいており、本日中に承認できると思う。過去から学ぶことが大切だ。かつては場当たり的な判断でやり過ぎてしまい、うまくいかないことがあった。その点では、レースを改善しながら、目標を共有し、レースの本当に良い部分を守れると、慎重ながらも楽観的に見ている」
Q:大胆な改革ではなく、細かい修正で対応するということか?
目標さえ一致していれば、安全面の目標を定め、レースの魅力である追い越しを守りながら、安全上の課題にも対処できる。進んでいる方向性は正しいと思う。やり過ぎず、足りなすぎず。目標をより明確に定義し直す必要があるかもしれないが、それはすでにかなりはっきりした形で示されており、良いことだと思う。
Q:パワーユニットについて、FIAのビジョンをどこまで信頼しているか?
基本的な考え方は、パワーユニットで遅れているチームが追いつけるようにすることであり、逆転を許すことではない。この点は非常に明確でなければならない。こうした決定は、正確さ・明確さ・透明性が伴わなければ、選手権の競争力に大きな影響を与えかねない。
かけ引きや思惑が入り込む余地はあってはならない。FIAは正しい精神のもとで行動する必要がある。各チームは自チームのパフォーマンス状況を把握している。私の見る限り、問題を抱えているエンジンメーカーは一社だ。そこは支援が必要だ。他のメーカーはほぼ同じ水準にいる。もし今の競争力の順位を乱すような決定が出てきたとしたら、大変失望する。
Q:ジョージが「まだ改善の余地がある」と話していましたが、あなたはどう見ているか?
私たちはドライバーに常にこう意識させるようにしている。ジョージがウィリアムズにいた頃から取り組んできたのは「内省」だ。まず「自分に何ができるか」を考え、それから外に目を向ける。両ドライバーともそう教わっている。
ジョージはミスも多く、勝てたはずのレースを取りこぼしてきた、という見方もあるだろう。セーフティカーやトラフィックに泣かされることもあった。ただ、自分のパフォーマンス不足が原因のときは、それをしっかり受け入れている。向き合って、非常に高いレベルで走り続けている。
キミについては、素晴らしい走りを見せる場面もあれば、難しい局面もある。今年で2年目だ。私たちが予測していた通りに成長を続けている。パフォーマンスを非現実的なレベルまで引き上げることが目標ではない。まだ19歳だから、むしろ周囲の期待値を適切に保つことが重要だ。キミは非常によく対応しており、プライベートな環境も充実している。全体として、想定の範囲内で順調に進んでいる。時に肩を抱いて励まし、時にプレッシャーをかける。すべて予定通りだ。
Q:シーズン後半でのダメージ管理を改善できる余地はあるか?
特に心配はしていない。私たちはあらゆる決定を注意深く観察している。自分たちの分析ツールから、自チームおよび競合チームのエンジン性能に関する詳細なデータを持っている。FIAも同じデータを見ており、スポーツの公正性を守ることを使命として行動し続けてくれると強く信じている。追いつきのメカニズムであって、逆転のメカニズムであってはならない。それが常に意図されてきたことだ。
Q:キミとジョージはカートで長く競い合ってきた。子どもたちにとってカートは遊びの場でもある。モーターホームでの家族生活はどうか?
私たちはモーターホームで生活している。妻のスージーは「家庭化」という言い方をあまり好まないが、家族みんなでモーターホームで暮らしながら、子どもたちは厳しいレース環境に身を置いている。それでも、この週末が大好きだ。他のどんな場所よりも、ゴーカートのレースにいる方が好きだ。キミとジョージは自分たちのレースを楽しみながら、子どもたちの前に姿を見せ、インスピレーションを与えている。私たちの息子のことも応援してくれている。
Q:2レース減となる場合、コストやコストキャップへの影響は?
そうした要因はすべて想定内だ。移動の混乱や輸送コストの上昇という最悪のシナリオも、開催費やスポンサー収入への影響も、すでに計算に入れている。サウジアラビアとバーレーンについてはすでに反映済みだ。状況が落ち着いて正常に戻り、今後に支障が出ないことを願っている。
Q:キミはタイトル争いについて慎重な発言をしている。シーズン序盤の彼のパフォーマンスは予想以上だったか?
いいえ、そうは思わない。もちろん優れたドライバーを期待して起用したが、彼の年齢と経験の少なさを考えれば、1シーズンかけてペースをつかんでいくことが必要だと思っていた。それがまさに起きている。同時に、1年間ずっと奇跡を期待しているわけでもない。ここまでいくつか非常に良いレースを見せてくれたし、ミスも減っている。セーフティカーなどに助けられた場面もあったが、逆に不運な場面も出てくるだろう。キミは私たちが期待していた軌道の上にいる。
Q:チームメイト間の競争について、過去から学んだことは?
F1ではチームメイトが最大のライバルになるというのが定説だ。状況をうまくマネジメントし、自由に戦わせる方法について、私たちは多くを学んできた。彼らはレースをする。チームとして大切にしている価値観がある。最も重要なのは「ドライバーよりもメルセデスが優先される」ということだ。
メルセデスは120年以上の歴史がある。15万人の観客の前でレースをしている。メルセデスのために走る機会を得るということは、それに伴う責任もあるということ。もしドライバーが「すべては自分のため」と考えているなら、それは私たちが求めるマインドセットではない。明確でなければ、1台だけ走らせる方を選ぶ。ただ、そうなることは決してないでしょう。私たちのドライバーたちは、メルセデスが体現してきた哲学と遺産をしっかり理解しているからだ。
Q:キミへのサポートとして、具体的に何ができるか?
これまでやってきたことを続け、関係を誠実に保つことが大切だ。うまくいっていないときはそう言い、うまくいっているときはそう言う。スピードや能力や人間性について、私たちに証明しようとしなくていい。必要なのは経験であり、それは時間とともに積み上がっていく。時に肩を抱き、時に改善点を率直に伝える。それだけだ。
Q:FIAとは目標を共有しているとのことですが、全員が本当にスポーツの最善のために行動していると思うか?
FIA・ドライバー・F1・チームすべてが、スポーツの守護者としての責任を自覚し、スポーツが自分たちに与えてくれたものへの敬意を持ち、改善が必要な部分は建設的に取り組み、守るべき部分はしっかり守る必要がある。意見が異なるのは当然だ。ただ、その議論はステークホルダー内部で行うべきであり、公の場で行うべきではない。
このスポーツを愛するファンは大勢いる。一方で気に入らない部分があるファンもいる。このスポーツが持つ大きな価値を守るために、私たちは守るべきものを守り、改善すべきものを改善しようとしている。公の場で発言することの影響は、すぐには現れないかもしれない。だからこそ、責任を持って言葉を選ぶ必要がある。
もちろん誰もが意見を言う権利はある。でもその意見は、ステークホルダーの場で表明すべきだ。それは建設的な形で行われてきた。私たちの目標はシンプルだ。ドライバーの安全を守ること。レースの魅力を守り、データに基づいてファンが何を好み、何を嫌うかを理解して行動すること。そして、長年このスポーツを支えてきたコアなファンへの敬意を忘れないこと。ノスタルジーも大切な要素だ。かつて追い越しが一度もなかったレースについて語る人がいる。ドライバーにとっては良かったかもしれない。でも、見ていてつまらないレースでは意味がない。今日、私たちは素晴らしいスポーツを持っており、それを次の世代につなぐ責任がある。
同時に、ベアマンの事故についても正しく見る必要がある。ブレーキを踏まずに両方のボタンを押してしまった、状況判断のミスだ。ドライバーの安全は常に最優先だ。とはいえ、私たちが愛する素晴らしいレースは数多くある。私はル・マンが大好きだ。ハイパーカーが他のクラスより30キロ速く走る。差は大きい。それでもドライバーの判断ミスは起きる。アラン・マクニッシュの事故もそうだった。それでも私たちはこのスポーツを愛している。ニュルブルクリンクの悲惨な出来事、雨の夜にワークスドライバーがアマチュアと同じコースを走る。F1の最高のドライバーたちでさえ、あらゆる危険も含めてこのスポーツを愛しているの。
今週末のイモラでは10秒以上の差があった。だからこそ、私が最初に挙げた2つの優先事項に集中しよう。レースをより面白くすること、そしてリスクを可能な限り減らすこと。常に最も安全なスポーツにはなれないかもしれない。でも、特に雨のような状況ではリスクを下げることはできる。私たちは常に、特定の規制の変化を見るよりも、スポーツの守護者であることを自分たちの使命として忘れてはいけない。
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