マルコ氏、退任後の本音と若手育成への危機感を語る「現場を離れて初めて、旅の過酷さに気づいた」
今週末のF1グランプリは、オーストリア・シュタイアーマルク州のレッドブル・リンクで開催される。ホストチームであるレッドブルは、チーム創設以来初めて、長年モータースポーツアドバイザーを務めたヘルムート・マルコ氏不在の母国グランプリを迎えることになる。
かつてル・マン24時間レースを制したマルコ氏は、2025年シーズン限りで顧問職を退任。現在はホテル経営に携わる一方、長年身を置いたF1の世界を外側から見守っている。
「今はみんなと同じ、ただのテレビ視聴者さ。チームから送られてくるすべてのデータを継続して受け取ることも辞退したんだ」
地元紙『Kleine Zeitung』の取材に対し、そう語った。
「エネルギー回生システムを含む複雑なパワーユニットレギュレーションにもかかわらず、レース自体は概ね見応えがある。スポーツの観点から言えば、ルイス・ハミルトンがフェラーリで勝つなんて、トト(ヴォルフ/メルセデス代表)にとっては“大当たり”みたいなものだろうけどね」
離れて気づいた現場の過酷さ
F1の第一線を退いた今、再び現場に戻りたいと思うことはないのだろうか。マルコ氏は迷いなく否定した。
「それはないよ。辞める時は本当に辞める時だと昔から言っていた。今はテレビでレースを追うことを本当に楽しめている。テレビの方が状況をより正確に把握できるんだ」
さらに、長年当たり前だった生活についても振り返った。
「現場を離れて初めて、あの絶え間ない旅(移動)がどれほど過酷なものだったかよくわかった。渦中にいる間はアドレナリンが出ていて、その疲れに全く気づかないものなんだ」
期待の若手ドライバーたち
現場を離れても、マルコ氏が育成に関わってきた若手ドライバーたちへの関心は失われていない。
レッドブルのルーキー、アイザック・ハジャーについては次のように語った。
「彼は新しいカート世代の出身だ。ジュニアカテゴリーでは不運に見舞われることも多かったが、F2では間違いなく最速の男だった」
そして、将来有望な存在としてアービッド・リンドブラッドの名前も挙げた。
「彼はまだ18歳だが、完全に肝が据わっている。驚くほど成熟しているよ」
育成コスト高騰に警鐘
一方で、長年携わってきた若手育成の現状については強い危機感を抱いている。
「現在の育成環境は、何をするにも狂ったような大金がかかるという意味で、非常に悪い方向へ向かっている」
マルコ氏によれば、トップレベルのカート界では、競争以前に経済力が大きな壁になっているという。
「現在、超プロフェッショナルなカートレースの中心地は北イタリアだ。子供をそこで生活させトレーニングに専念させるために、わざわざ移住する親たちもいる。しかし、まともなチームに所属して1シーズンを戦うだけでも、年間で最大25万ユーロ(約4,000万円以上)もの資金を支払わなければならないんだ」
そんな過酷な環境の中で、オーストリアから次世代のF1スターが生まれる可能性はあるのだろうか。マルコ氏は現実的な見方を示した。
「ゲルハルト・ベルガーの息子であるヨハン・ベルガー、そしてもちろんジャック・ヴォルフ(トト・ヴォルフの息子)といった名前が挙がるだろう。彼らには偉大な父親からの全面的なバックアップと、パドック内での強力なコネクションがある」
そのうえで、現在のF1が置かれた状況をこう総括した。
「しかし、特別なバックグラウンドを持たない“普通の人間”にとって、F1への道はもはや資金的に不可能なレベルに達している。十分な財政的背景(スポンサーや資産)を持っていなければ、上を目指すのは確実に難しくなっていく一方だ」
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