【日本GP】HRC渡辺社長が語るアストン×ホンダ―振動問題と苦戦、日本人ドライバーの可能性
日本GPのメディアデーで、ホンダ・レーシング(HRC)社長の渡辺康治氏がインタビューに応じた。
アストンマーティンとの新体制で直面している苦戦の要因や振動問題の現状、さらには日本人ドライバー起用の可能性についてまで、率直な見解を語った。
鈴鹿への想いと現在の立ち位置

鈴鹿は創業者である本田宗一郎氏が築いた、ホンダにとって特別な意味を持つサーキットだ。挑戦の原点とも言える“ホームトラック”であり、多くのファンが集まる舞台でもある。
だからこそ結果を残したい思いは強いが、新たなパートナーシップのもとでの戦いは決して簡単ではない。現状は苦戦を強いられており、改善は進んでいるものの課題は依然として多いという。
それでも、ファンの前で挑戦を続ける姿勢を示すことが重要だと語った。
プレシーズンから見えた振動問題と課題

バーレーンのプレシーズンテストでは、想定以上の振動が発生していた。単体テストでは問題が小さく見えていたものの、実際に車体と組み合わせると非常に厳しい状態だったという。
開幕に向けて十分な検証ができなかった中で複数の対策を試し、そのうちのひとつを開幕戦に投入。結果として一定の改善が見られ、その後の2戦でも進展は確認されている。
特にバッテリーへの負担は軽減され、1戦で使えなくなるような状況は回避できるようになった。もともと限られたバッテリーで戦う必要があるため、これは大きな前進だ。
一方で、ドライバーが感じる振動については、解決までにもう少し時間がかかる見込みだ。根本原因は完全には特定できておらず、現在は段階的に改善を進めている。
ADUOとコストキャップの制約
ADUO(追加開発アップグレード)は現行ルール上、すぐに適用できるものではない。そのため、現段階ではパフォーマンス向上よりも信頼性改善が優先されている。
今後、ADUOが許可されれば開発の自由度は大きく広がる。コスト投入も可能となり、より踏み込んだ改善が期待される。
アストンマーティンとの関係性

パートナーであるアストンマーティンとの関係は良好で、現在は信頼関係を築いている段階だという。
信頼は短期間で築けるものではなく、時間をかけて積み上げていく必要がある。実際に双方のスタッフが長期的に関わりながら、課題解決に取り組んでいる。
技術連携と開発の方向性
技術面では共通の問題意識を持ち、密にコミュニケーションを取りながら開発を進めている。
エンリコ・カルディレ氏やエイドリアン・ニューウェイ氏、さらにローレンス・ストロール氏とも連携し、方向性の一致を図っている。
また、燃料や潤滑油などのパートナーシップを担当するアンディ・コーウェル氏、トラックサイドで活動する折原氏らも含め、全体での連携体制を構築している。
ICEパフォーマンスと今後の課題

ICE(内燃エンジン)の性能については、まだ改善の余地があると認識している。
仮に振動問題が解決しフルパワーを発揮できるようになったとしても、それだけでは十分ではなく、さらなるパフォーマンス向上が求められる状況だ。
ホンダ本体とF1活動の関係
EVなど本業の状況がF1活動に影響する可能性はあるものの、現時点では「結果を出してほしい」と送り出されているという。
F1側の事情も理解されており、開発拠点であるサクラのメンバーも安心して取り組めていると語った。
体制変更と人材の課題

ホンダのF1体制変更については、一部で誤解があった可能性を認めつつも、情報は事前に共有されていたと説明。
2024年のプロジェクト終了後、カーボンニュートラル分野などへ人材を移した影響や、採用の遅れが課題としてあったことも明かした。
現在は適切な人材を揃えた体制で再構築が進められている。
想定以上の苦戦、それでも見えている道
開幕2戦の結果については、「想定以上に苦労している」と率直に認めた。
レッドブルとの成功経験からパワーユニットの完成度には自信があったが、新体制と新レギュレーションへの移行により、考えていた以上の困難に直面している。
ただし、課題は明確であり、次にやるべきことは見えているとして、過度な悲観はしていない。
日本人ドライバー起用の可能性

現状、チームを保有していないため最終決定権はないものの、パートナーに対して意見を伝える立場にはある。
角田裕毅や岩佐歩夢については「一緒に戦いたい」という思いを持っているとしつつも、まずはそれぞれがキャリアを築くことが重要だと強調。
将来的に再び共闘できる機会があれば理想的だと語った。
振動の原因と今後の対応
振動の原因については、いくつかの要因は見えているものの、根本原因の特定には至っていない。
現在は振動を“受け止める”方向と、“発生を抑える”方向の両面から対策を進めている。
初期の問題はICEに起因していることは明らかだが、実際の挙動は車体との組み合わせによって変化する。そのため、エンジン単体ではなく車体とのインテグレーションを含めた総合的な対応が不可欠となっている。
【関連記事】
