アントネッリ、執念の1ポイント死守を阻んだ“フェルスタッペンのクラッシュ”を悔やむ
イギリスGPの決勝レースのスタートで出遅れ、フェラーリのルイス・ハミルトンらに先行を許す苦しい展開から、抜群のレースペースで次々とライバルをオーバーテイクしていったメルセデスのキミ・アントネッリ。35周目のクリーンなタイヤ交換を経て、ニュータイヤの圧倒的なスピードアドバンテージを武器に、ついに首位を走るシャルル・ルクレールを捉えた。
悲願のGP通算6勝目は時間の問題だとパドックの誰もがそう確信した瞬間、アントネッリのマシンに異変が起きた。
悪夢の原因ー縁石の餌食となった「左フロントのブレーキダクト」
突如として失速し、何度もピットインを繰り返したアントネッリ。チームは当初、フロントノーズの破損を疑いパーツを交換したが、ペースは一向に戻らなかった。レース後に判明した本当の原因は、シルバーストンの過酷な縁石だった。
「縁石を激しく乗り越えた際、左フロントホイールのブレーキダクトの一部を破損してしまったんだ。それが最悪な形でホイール内部に挟まり、ロックしてしまっていた」
ダウンフォースを大幅に失い、マシンは非常にコントロールが難しい状態に陥った。チームはこれ以上の走行は危険と判断し、リタイアを指示したが、コックピットのアントネッリは頑なにこれを拒否した。
「あの時点で、僕はまだ入賞圏内の10位を走行していた。どうしてもチームに、そして自分に1ポイントを持ち帰りたかったんだ。だから走るのをやめたくなかった」
絶望の連鎖-5秒ペナルティと、トドメを刺したセーフティカー
しかし、満身創痍のマシンをねじ伏せながらのドライビングは、アントネッリをさらなる窮地へと追い込んだ。
不安定な挙動から何度もコースを飛び出してしまい、トラックリミット超過、レースコントロールから「5秒のタイムペナルティ」を科されてしまう。それでもアントネッリは諦めず、ペレスらの猛追から5秒以上のマージンを築き上げ、ペナルティを帳消しにしようと死に物狂いでプッシュを続けていた。その希望を完全に打ち砕いたのが、残り数周で発生したマックス・フェルスタッペンのクラッシュだった。
「本当に、最悪の事態が重なった気分だったよ。ペナルティがあっても、あの時点のマシンならなんとかコントロールできたし、10位を死守できるだけのギャップを後ろに築きつつあったんだ。
だけど、マックスのクラッシュでセーフティカー(SC)が入った瞬間、すべてが文字通り『終わった』と分かった。隊列が詰まってしまえば、僕の5秒ペナルティはそのまま結果に直撃する。結果として16位まで落とされ、ノーポイント。本当に不運だった」
王者のメンタリティ「これまでが良すぎた。必ず次でやり返す」
直近の3レースで、バルセロナでの2位走行中のマシントラブルに続き、またしてもメカニカルトラブルによる無得点を喫したアントネッリ。しかし、ポイントリーダーとしての風格を漂わせる神童は、すでに次戦を見据えている。
「正直に言って、それまでは5連勝を飾るなど、信じられないほど素晴らしい成功の波に乗っていた。すべてが僕にとって上手く行きすぎていたんだ。だから、こういう不運な時期が来るのもレースの一部さ。
バルセロナでも今回も、僕たちには確実に勝利を狙えるだけのスピードがあった。それだけにアタックする機会すら与えられずに終わったのは本当に悔しいけれど、ため息をついていても始まらない。
最も重要なのは、次のレース(ハンガリー)で僕たちがどれだけ強力に巻き返せるかだ。 マシンの戦闘力があることは証明されているんだからね」
トト・ヴォルフ代表とフェラーリのバスール代表による場外乱闘が激化するなか、技術トラブルによって自滅する形となったメルセデス。次戦ハンガロリンクで、この怒れる神童がどのような倍返しを見せるのか。2026年のタイトル争いは、一瞬の油断も許されない混沌の領域へ突入している。
【関連記事】
